ロクマ小説2

□ブログ小話3
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エラー
エラー
エラー
エラー…………

『深刻なエラーが発生しました。直ぐに電子頭脳の点検を行って下さい』

電子頭脳に響く声。
ぐるぐると渦巻く、今までに無い邪悪な感情。
わからない、わからない、ワカラナイ……
感情の制御が追いつかない。エラーが引き起こした洗浄液の過剰分泌……まるで、人間の涙のようにボロボロと流れ出すそれを拭うこともせずに、俺は組み敷いている赤い機体―――クイックを見据えた。
こちらを強気な瞳で睨み付ける彼の頬を、俺の洗浄液が濡らした。
その、男性型にしては細い首を強い力で絞め続ける。そんなことでロボットは死んだりはしないが、目の前のクイックは苦しそうに口をパクパクと動かした。
強気な瞳が、曇る。
まるで救いを求めるように、その碧は細められた。

「クイック」

エラーエラーエラーエラーエラー……
煩い、そんなことはわかってる。
彼に会ったその日から、俺の電子頭脳は、確かに壊れ始めたのだ。
最初は、愛しかった。愛しくてしょうがなかった。
だんだんそれは、独占欲や嫉妬……そんな醜い感情に代わり、俺の電子頭脳をエラーと言う蟲が侵食始めた。
だんだん、わからなくなってきた。
俺は彼が好きなのか、それとも憎いのか……わからないわからないワカラナイ

クイックの唇が、音声を発すること無く俺の名前を呼んだ。その手が、俺の頬を伝う洗浄液を拭った。

意識を失う瞬間、確かに、彼は微笑んだ。 こんなエラーだらけの俺を、慈しむように。

―――なんでお前は俺なんかを愛してくれたんだ

わからないわからないわカラナイワかラナイ

お前が、俺のことなんか嫌いなら良かったのに。
俺が、お前のことなんか好きにならなければ良かったのに。
そうすれば、きっと、幸せだった。
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