ロックマン小説
□初めての弟
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「クラッシュ、喜べ。ワイリー様が、お前の弟を作ってくださるようだ。」
メンテナンスルーム。
そこで精密機器のメンテナンスをうけていたクラッシュに向かって、メタルが目を細めながら言った。
「えっ!ホント!?俺にも弟が出来るの!?」
クラッシュは、カメラの水晶体(人間で言う、瞳だ)をキラキラ輝かせると、伏せていた身体を起き上がらせた。
繋がれていたコードが、その反動でちぎれ、エラー音が響く。
「おい、クラッシュ。メンテナンス中だ。煩いぞ。」
隣で同じくメンテナンスを受け、目を伏せていたクイックがめんどくさそうに言った。
「え〜だって〜……弟だよ弟。俺、今まで兄貴しかいなかったからさぁ……嬉しいよ。」
クラッシュの言葉に、クイックは鼻で笑うと再び目を閉じた。
「外殻は完成したらしい。メンテナンスが終わったら二人ともワイリー様の研究室に来なさい。
ワイリー様も新しい弟を見せたがっている。なんでも……最高傑作、らしいから」
……最高傑作。
その言葉に反応し、クイックが急に起き上がった。
ぶち、ぶちぶち……
コードが一気に引きちぎられる。
エラーを告げる警告音が更に大きく鳴り響いた。
「……最高傑作……だと?馬鹿な。最高傑作は俺だろ?
……いいぜ。確かめてやるよ」
ニヤリ、とクイックは口を歪ませて笑った。
「ちょっとクイック!人のこと言えねーじゃん!あっ、あと俺の弟壊すなよ!」
クラッシュの言葉が聞こえているのかいないのか、クイックは何かブツブツとつぶやいていた。
「……ま……まあ、とにかくだ。メンテナンスを早く終わらせてくれ。」
……相変わらずだな……
メタルは、ふぅとため息をつくとメンテナンスルームを出て行った。
一抹の不安を覚えつつ。