ロックマン小説

□妄想ホログラム・後
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―――ここが、クイックの消えた場所。


朽ち果てた研究所の前、メタルは今一度、クイックに回線を繋いだ。


…………


やはり、返答はない。
回線機能が壊れたか、もしくは機能停止しているのか……


どっちにしろ、彼が危ない状況に陥っているであろうことは確実だ。


「クイック!!」


メタルは、用心する様子もなく――普段の彼なら信じられないことだが――、研究所に足を踏み入れる。


「クイック!?」


返答は……ない……


―――奥か……?


朽ちた廊下に、点々と続く、草を踏み分けて入ったであろう足跡。

それは、奥の部屋へと続いている。
「何か」が起こったとしたら、そこだろう。


奥の部屋へと続く扉は、無用心にも開け放たれている。


―――何か居る。


メタルのセンサーが、何かしらの生体反応をキャッチした。
恐らく人間ではない、これは自分達と同じ類の……


―――ロボット……?


メタルは、ブレードを構えると、足音を立てないようにそろそろと部屋へと歩を進める。


瞬間。


頭脳に走った軽い電撃。
頭脳内を乱暴にまさぐられるような奇妙な感覚。


クイックの時と、同じである。データを、取られた。


メタルは、とっさに記録データのセキュリティーを強化すべく、電子頭脳に働き掛けたが、

恐らく、もう遅い。


―――何のつもりだ!?何故データを……


メタルは、生体反応のある箇所を睨むと、メタルブレードを放った。


キィンと、ブレードが何かに弾かれる音。


そして


「メタル……!助けに……来てくれたのか!?」


「……!」


意外にも、その生体反応の主は、メタルのよく知るところの人物…………


「……クイック……!?クイックなの……か……!?」


「……情けねぇな……動けなくなってしまって……な」


メタルは、安堵したようにため息をつくと、ブレードを降ろした。


「何回も、回線を繋いだんだが……回線機能を破壊されたのか?」

「回線機能だけじゃない。満身創痍ってとこだ」


メタルが心配そうに近づくと、クイックは皮肉気にそう、言った。

確かに、彼の状態は満身創痍。
恐らく、神経回路の類も破壊されたのか、苔の生えた壁にもたれるようにしてぐったり座っている。
赤い装甲は半分破壊され内部のコードが見て取れた。
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