ロックマン小説

□機械の見るユメ 2
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俺はここにいてはいけない

そう、思った。

あんな夢を見るのも、俺の存在意義が「破壊すること」だから。

ワイリー博士が言っていたことを思い出す。
「破壊」を念頭に入れて作った結果、俺に常に付きまとう、破壊を渇望する強烈な飢餓感
「破壊衝動」とでもいうべきそれは、常に俺の電子頭脳内に存在する。
それは、仕方の無いことなのだと。

それは、不意に訪れ、勝手にどんどん膨らんで、俺の心を支配して、俺は俺ではなくなる。
気がつけば、周りには何もなくなっているのだ。
壊された鉄の破片や、コンクリート、がれきの山・・・そこに俺はひとりぽつんと立っているのだ。

――― この力は、今にきっとフラッシュを傷つける。

自分にもわからない間に。
あの夢のように、きっと。

――― なら、俺はいないほうがいい。

そう、思った瞬間、体は勝手に動いていて、俺は研究室を飛び出していた。
どこに行こうと思ったわけではない。

ただ・・・・ここではないところへ。
フラッシュが居ないところへ、行かなければと。

彼を傷つけたくないから。




―――機械の見るユメ




「・・・・クラッシュ???」

研究室のほうから、クラッシュが奇妙な足どりで歩いてくる。
・・・なんとなく、フラフラした、起きているのかいないのかわからない、そんな足どりで。

クイックは、思わず声をかける。
いつもなら、たいして気にも留めないところだが、今日の彼は、どこと無く変だ。

いつもキラキラしている若葉色の水晶体が、曇っている。
明るいその表情も、今は暗い。

「どこへ行く」

すれ違いざまにかけられたクイックの言葉を、聞いているのかいないのか、彼はただ真っ直ぐに「何か」を見据えて、外のほうへと歩いていく。
兄の言葉を無視するとは・・・不愉快だ。

「おい!」

クイックは強い口調で言うと、クラッシュの肩に手をかけた。

「・・・・・・・・・!」

クラッシュは、クイックを無言で睨むと、その手をドリルアームで払いのけた。
その、緑色の瞳に、微かに赤い色が混じっていることにクイックは気付く。
何かを渇望しているような、飢えた赤が。

――― ああ、破壊衝動の発作か何かか。
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