DWNリーマンパロ
□ナイトメアプリズナー・中
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5月4日
PM12:25
ワイリーカンパニー情報処理課オフィス
「……俺がデジタルリンクする!!」
クイックは、メタルの身体を来客用のソファーに横たえると、叫んだ。
『は!!??』
皆一様に、驚きの声を漏らす。
「このままだとメタルが消えるんだろ!俺が行く!助けに行く!」
「テメエ馬鹿かよ!?メタル課長でさえ捕まったんだぞ!?テメエなんかが行ってもどーにもなんねーよ!とりあえず落ち着け!」
血相を変えて、デジタルリンクしようとするクイックを、フラッシュは後ろから羽交い締めにして押さえる……が
「うるさい!」
力で彼に敵うはずもない。
フラッシュは、暴れるクイックの肘うちを顎に喰らって、痛!と叫びながらその場にしゃがんだ。
「フラッシュ……!?」
クラッシュが心配そうに駆け寄ってくる。
それに、大丈夫だ、と小さく返事をすると、フラッシュはクイックの方を見た。
課長席のコンピュータからデジタルリンクしようとしているクイックを、エアーとバブルが二人がかりで止めている。
……今、デジタルリンクなどしたら相手の思うつぼだ。
クイックまで捕まってしまったら洒落にならない。
とりあえず、冷静にならなければいけない。
フラッシュは、そう電子頭脳で判断すると、立ち上がりクイックのもとへと歩を進める。
そして
「とりあえず、落ち着け馬鹿!!!!」
ガッ!!
鈍い音をたてて、クイックの頬に衝撃が走った。
ああ殴られたのだと、クイックが実感したのは、彼が衝撃の反動で床に膝をついた時。
「…………」
頬の痛角センサーが、じんじんと熱を帯びてくる。
「落ち着けっつんてんだろ馬鹿野郎!」
フラッシュが、クイックを見下ろしながら叫んだ。
クイックは、それを睨む様に見ると
「……でも、メタルが……!!」
ほとんど泣きそうな声で言った。
その場に、険悪な雰囲気が流れる。
しばしの沈黙。
クラッシュとヒートの息を飲む音が妙に大きく響いた。
「…………とりあえず、あのエレキマンとやらに連絡を取るのが最優先かと思うが。
何がなんだかさっぱりわからん。
今考え無しに動くのは得策ではない。」
エアーが、膝をついたクイックを起き上がらせながら言った。
クイックは、力無く「ああ」とつぶやく。
―――システム管理責任者エレキマン……
フラッシュは、拳を下ろすと心のなかでつぶやいた。
とりあえず、エアーの言う通りだ。
相手の腹の内を知るためにも、そいつと話してみるべきだ。
―――恐らく、そいつがメインコンピュータの全てを取り仕切っている。
なら、エレキとやらの気を反らしておけば、メインコンピュータに入ることも可能かもしれない。
「俺が連絡する。」
フラッシュは、言うと席のパソコンのキーボードを打ちはじめる。
「ライト&コサックカンパニーに回線接続。こちらワイリーカンパニー情報処理課フラッシュマン」
『はい、こちらライト&コサックカンパニー受付ロールでございます。』
ディスプレイに、蜂蜜色の髪をポニーテールにした女の子が映る。
彼女は、屈託無く笑うと言った。
「システム管理責任者エレキマンに連絡を取りたい。」
『アポイントメントはお取りでしょうか?』
「ない。メタルマンの件で話をしたい、と伝えろ。」
『……少々お待ち下さい……』
恐らく、フラッシュのただでさえきつい目付きが、更に吊り上がっていたのだろう。
怒っている時の、フラッシュの顔は格段に恐ろしい。
少女は、声を震わせながら無理矢理笑顔を作る。
そして、インカムマイクで何者かと連絡を取る。
『……お待たせ致しました。只今エレキマンに回線接続いたします。失礼しました。』
ぷっ……と怖がる少女の笑顔が消え
『やあ、お待ちしていましたよ。』
「……テメエがエレキか…………」
フラッシュにとって忌ま忌ましい、優男の顔が映し出された。