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□D・ネクタイ
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それは朝の事だった。


準「おはよ。」


朝。
いつもと同じで、準太が挨拶してきた。


「おはよ、う?!」


私も、いつも通りに挨拶し返そうとしたけど、上手く出来なかった。

何故なら……


「どーしたの!?そのヨレヨレのネクタイはッ!!」


準太のネクタイがヨレヨレ過ぎて驚いたからである。

昨日まではピシッと…っていうほどじゃ無いけど、そこまでヨレヨレじゃなかった。
まだネクタイが正常に結べていた。

けど今日のは正常じゃない。異常だ。
まずキチンと結べてない。ネクタイの原形がない……。

一体何があったの…。


準「あー…。実は…さ、昨日やっちゃって…。」

「何をやったのよ。」

準「コレ。」


すっと出てきたのは包帯でグルグルに巻かれた準太の手だった。

てか


「どーしたのよーッ!これはァ!!」


ケガしてるじゃん!


準「昨日の放課後さ、試合したんだよ。レギュラー対準レギュラーで。んで変な投げ方しちゃってさ…。突き指して…。」

「右手全部?」

準「ううん。人さし指だけ。」

「じゃあ、なんで手の全体に包帯が巻かれてんのよ。」


人さし指だけでいいじゃん。


準「あー…うん。なんか利き手じゃない方で一本の指に巻くのめんどくさくって…。」


あぁ。なるほど。


「だからネクタイも、まともに結べなかったんだ。」

準「うん。」


そっか。
利き手じゃない方だと結びにくいよね。ネクタイって。

必死で結んだんだろうな……。コレ。


「プッ…。」

準「な、何…。」

「いや…なんか…必死に結んでたの想像したら…か、可愛くて…。」

準「可愛い!?…止めろよ。女子に言われると…なんか…複雑な感じなんだけど…。」


ショボンとする準太が尚可愛い。

でも、これ以上言うのはダメな気がしたから止めた。


「…しょーがないなー。」

準「え。」

「私が結んであげるよ。」

準「え!い、いいって!!別にこのままでも支障ないし…。」

「いいから。いいから。見栄えも必要だし、ね?」

準「……じゃあ…お願いする…。」

「よろしい。」


勝った私は準太のネクタイを結び始めた。

昔、お父さんのネクタイを結んだのを思い出しながら、結んだ。


準「…なんか、さ。」

「ん?」

準「俺、サラリーマンの夫の気持ち…分かる気がする。」

「へ?」

準「…なんにもないデス。」




ネクタイって、いいよね(笑)

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