月の図書室
□〜mother〜
1ページ/4ページ
さわ……。
心地よい春の風が吹く中庭のベンチに座って、自分の膝で眠る愛娘を、穏やかなほほ笑みを浮かべて見ている魔王陛下(♀)の姿があった。
昨夜のパーティの時と良く似たドレスを着ているが、昨日と違い、胸元はおおきくはだけてはいるものの、袖口の少し広がった長袖を着ていた。
「母親の居ない寂しい思いをさせて…ごめんな…」
膝の上で眠るグレタの髪を撫でながら呟く。
昨日のグレタの言葉が耳を過る…。
『ねぇ…ユーリ』
『どうした?グレタ』
『あのね…』
『うん』
『ユーリのこと一回だけでいいから…だから…』
だから…
『お母様って呼んでいい?』
少し寂しそうにするグレタを思わず抱き締めていた。
『そうだな…じゃあ明日は一日、お母様って呼んでいいよ』
『ほんと!?』
『うん』
『ユーリありがとう』
そう言って抱き締め返してきた手はまだ小さくて、母親の居ない寂しい思いをさせてしまった事に少し悲しくなった。
『〜mother〜』