月の図書室

□〜mother〜
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さわ……。


心地よい春の風が吹く中庭のベンチに座って、自分の膝で眠る愛娘を、穏やかなほほ笑みを浮かべて見ている魔王陛下(♀)の姿があった。
昨夜のパーティの時と良く似たドレスを着ているが、昨日と違い、胸元はおおきくはだけてはいるものの、袖口の少し広がった長袖を着ていた。


「母親の居ない寂しい思いをさせて…ごめんな…」


膝の上で眠るグレタの髪を撫でながら呟く。


昨日のグレタの言葉が耳を過る…。


『ねぇ…ユーリ』


『どうした?グレタ』


『あのね…』


『うん』


『ユーリのこと一回だけでいいから…だから…』


だから…


『お母様って呼んでいい?』


少し寂しそうにするグレタを思わず抱き締めていた。


『そうだな…じゃあ明日は一日、お母様って呼んでいいよ』


『ほんと!?』


『うん』


『ユーリありがとう』


そう言って抱き締め返してきた手はまだ小さくて、母親の居ない寂しい思いをさせてしまった事に少し悲しくなった。





『〜mother〜』
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