☆osa asaU☆

□正しいヤキモチのやき方のススメ
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「トウコが様子見て来いって。麻子もそんな子供じゃないって言ったんだけどそれでも行けってしつこくて。」


「テレビ、見た?」出したコーヒーに息を吹きかける彼女が下から私を見上げる

「あ〜ゴメン。見てない。朝バタバタしてて。」

答えながら窓を明けて風を部屋に送る。

まだ寒いけど、確かに変わる次の季節の温度を肌につたった



「結構流れてたんだってね。稽古の様子。周りの目が同情でいっぱいだったよ。」



「いったい、どんなシーンだったのかしらね〜」 最近になってようやく覚えた、この人へのごまかし方。

ウソとホントは半分ずつ。

自分から話題を振ればあとは答えを待つだけ。

正直、まだ上手く出来てるとは言い切れないけれど。



「キスシーンばっかりだったって。何回も見せつけみたいに繰り返してたって。」


「私も見てないから知らないけど。」とサラリと付け足す彼女に「あ、見てないんだ。」 とふいに呟く。


「だって恥ずかしいもの。自分がリード出来なくてソワソワしてるのなんてまんま男役だし。見てられないよ。」


瞬間、ウソばっか。と胸の中で反射的に答えていた。


ちゃんとリードさせてたくせに。あのキスを待つ顔の見せ方なんて、どこで覚えたんだか。


昔からの性質だけど、この人のどこか頼りなさは男性がいる余計目立って

これは恋人の贔屓目かも知れないけれど
それは充分キレイに見えた。


ほんと遠いとこ行き過ぎで、追いかける気力すら起こらなくなりそう



「二人から愛されるなんてモテモテだ。」


「最後死んじゃうけどね。」


「それでもあんなに好かれて。態度でも心でも熱い思いぶつけられまくり。」

「まさちゃん幸せだよ。」と付け足した私に「熱いの苦手なの知ってるでしょ?」 とキレイな声でなだめられてしまった



「実際、ほんと余裕ないのよ?うたもセリフも、あんなキレイなドレス着こなせてないの恐いくらい分かるし。」


「だから、あんなキスシーンなんて。」疲れた声にため息混じりで告げたその言葉は本当に彼女にとって、それは『なんて』くらいの出来事にしかないことをよく表した。


分かってる。いまの彼女にとってあんなのはどうってことない問題。新たに求められる課題の多さを乗り切ることに手いっぱいで


最近の腕にくるまれるその体が、トップになったばかりの時と重なるほど細くなっているから



なのに、この前からどうしても何かが胸につっかえて仕方ないと思ってしまう私は
なんて子供なのだろう





考えてる間に「それで悔しいから見てない。」とキッパリ言い切った春野さんに「…そっか。」となんとも弱々しく返してしまい


「あ、ちょっと冷めちゃったからコーヒー入れ直してくるね。」と 悟られないように慌てて立ち上がった。






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