☆osa asaU☆

□正しいヤキモチのやき方のススメ
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「…やっぱり、ひどかったみたいだね。」


急いで背中を向けた私にその声は縛るみたいに絡み付く


「あなたにそんな顔させちゃうほどだもん 。ほんと、ひどかったんだ。」




分かりやすく固まってしまった私の前にスッと回り込んで持っていたカップを取り上げられた


コツンとテーブルにカップを置いて「まだあったかいから、少し話、して…いい?」とそう前置きをゆっくり告げられると
気付いた時には、彼女の腕の中で




「お願いだから、変に気とかだけは遣わないでね。」



耳元で聞こえた声は、すごく悲しげで思わず鼓動が跳ねた


「ヤキモチくらいならいくら妬いてもらっても構わないし、それくらい、いくらでも私が引き受ける。でも」


「麻子がまた一人でそんな顔すると思うのは、例えお芝居でも集中出来なくなるから。」


恋人たちの抱擁と言うよりそれはまるで抱きすくめられるような熱さだった



「誰に何と言われても構わないけど、一番大切な人に誤解されるのは悲しすぎるし、かと言って変に我慢とかさせるのは恋人として頼りなさ過ぎる気もする。」


「別に…気にしてないよ。…仕事なんだし。」


「さっきも言ったけど、余裕なんてないくらい必死だから、きっとそんなこと思わないだろうけど」



「もし、またそんな風な顔してる時には必ずそばに居させて欲しい。」選ぶように丁寧にそう発せられた言葉たちは、体中に染み渡るように入り込んできた


「いい?」と耳元で聞こえる、その言葉は全てを溶かすように私をまた子供にする


「…その時は、飛んで来てくれるの?」



「麻子さんの仰せのままに。どこへでも。」



「…熱いの苦手って言ってたじゃん。いいの?もうかなり嫉妬して困るかもよ?」


「遠慮される方が辛い。…それに」


「恋人にあんな場面見られて嫉妬されないのも、逆に辛いし。」クスリと笑った春野さんにやっと自分の気持ちに気づく



ああ、私ヤキモチすら焼けないほど
ショックだったんだ。


長かったフワフワが霧が晴れるみたいに引いていくのに気づき、急に気持ちが溢れそうになって焦る


「ねぇ、その涙は泣きたくなるほど、この前のテレビに妬いてくれてるって自惚れてもいいってことなのかな?」



からかうように聞こえた春野さんの楽しげなその声に「だから見てないってば。」と思わずつまらない意地を張ってしまった私に「はいはい。麻子は見てない。」と優しく微笑まれた口元でそのまま唇を合わせられた。







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