復活長編小説
□『時雨』第一章(出逢い編)
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確かに今日はやけに多く『鬼』が多く出現していた。何時もならもう『鬼』は刹那達のように『鬼』を狩る『鬼狩り』と呼ばれる者達を恐れて現れないのだが、今日はまるで何かが現れるのを待つかのように刹那達が今いる地点を中心に多く出現しているのだ。そして今現れた『鬼』達の数もまた尋常ではなかった。
「何…この数。」
明らかに30以上はいる。月蝕は進み、月はもう半分程しかなく周りは暗い。
ザワザワザワ
「この感じ…。!まさか!」
“漸く気付いたか?『調停者』。”
辺りに『鬼』の声が響く。
『調停者』とは、代々時空を管理する者につけられる称号で、様々な世界の調和を図っている。『調停者』の存外が知られている世界もあれば、知られていない世界もある。『調停者』は時空を越えて異世界を渡る力が必要とされ、長い間力を持つ者が現れなかったのだが、刹那はそういった力もあり、14才という異例の若さで『調停者』として存在している。
「どうしたんだ?刹那。」
「時空の嵐が来る!あと数年は先の事だと思っていたのに…!」
「時空の嵐?」
「数十年に一度時空の狭間で起こる嵐のような現象の事よ。時空の嵐が生じている間は一切他の世界には渡れない。」
「何で『鬼』が嵐を待ちわびるんだ?『鬼』には関係ねぇ筈だぞ。」
“ククク!今回は特別だ。何せ今宵は『完全な月蝕』だからなぁ。”
「完全…な?」
「皆既月蝕の事か?」
「!違う!様々な世界で同時に皆既月蝕が起こってる!」
「それは有り得ない事なのですか?」
「世界中で皆既月蝕や皆既日蝕が起こるのは数千、いえ、数万年に一度有るか無いかよ。」
「それが起こったからどうしたというのだ?」
「私は今回の月蝕が単なる皆既月蝕だと思ってた。でも此れは『完全な月蝕』。こうなってくると話が違ってくる。」
「どういう事?」
「今迄の『鬼』達は恐らく全て囮…!」
「何だと!?」
“良く分かったな。流石は『調停者』。だがもう遅い!”
「何がどうなってんだよ!」
「『完全な月蝕』は時に時空の嵐を巻き起こす。そして…」
“月が完全に消える時、月の真下に『門(ゲート)』が現れるんだよ!此れを使えば『鬼』も異世界へ渡れる!”
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
『鬼』の言葉に全員が息を飲み、戦慄した。
「迂濶だった!!『鬼』が大量発生したのは気付かせない為か!」
月が完全に消え去り、辺りは一面暗闇となる。そして同時に竜巻状の風が発生した。
“『門』が現れるぞ!これで『鬼狩り』どもがいない世界へ渡れる!”
「『門』というのは異世界へ渡る為の入口だろう?『調停者』である君しか開けないものではないのかい?」
「『完全な月蝕』や『日蝕』の時は『調停者』がいなくても『門』は開く。」
竜巻の中心地点の空間が次第に歪み、まるでブラックホールのような穴が現れた。穴の中もまた竜巻状の風が発生している。
“さぁ!我等が同胞よ!共に異世界へ!!”
「行かせない!」
綱吉の言葉と共に全員が『鬼』に攻撃を仕掛けた。しかし吹き荒れる風が妨げとなり、思うように攻撃が出来ない。その隙に、『鬼』達は次々と『門』を通っていく。
「ど、どうしましょうι」
『鬼』は“影”と同じような身体をしているので、風をもろともせずに竜巻の中心に入っていけるのだ。
「こうなったら、行くしかないか…。」
刹那が呟いた瞬間、炎が竜巻に穴を空けた。
「刹那!どうする気?まさか!」
「今回の件は『調停者』である私のミス。だから『調停者』としての仕事を果たす。」
「き、危険ですよ!刹那!」
「アホ牛の言う通りですよ刹那さん!大体嵐の間は移動出来ないのでしょう?」