復活長編小説
□『時雨』第一章(出逢い編)
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「嵐の間は不安定で『門』が開かないからね。でもこの『門』は月蝕の力で開いてる。『調停者』の私なら、無傷で行けるよ。幸い出口も一つしか空いてないみたいだから、『鬼』達と一緒の世界に行ける。」
「でも…」
「刹那!」
「ツナ…」
「全てが終わったら、無事に帰ってきて。待ってるから。」
「ありがとう、ツナ。『鬼』を全部狩って嵐がおさまったら帰ってくるよ!約束する。」
そう言うと、刹那は『門』に飛び込んだ。
月蝕もピークは去り、光が少しずつ戻っていく。竜巻も弱まり、『門』の存在も揺らいで、やがて閉じていった。
「約束だよ、刹那…」
「大丈夫だよ、綱吉。彼女は強い。それに、彼女が向かった世界での『沢田綱吉』がきっと彼女をサポートするさ。」
様々な世界では、名前も顔も同じ人間が存在している。
「恭弥…。でもやっぱり心配…。もし此の世界よりも危険な世界だったら…。
もしその世界の俺達に会えなかったら…。そもそもその世界の俺が良い人じゃなかったら…。」
「それはないね。」
「有り得ないッス!」
「そうだぜツナ!」
「刹那も言っていたではありませんか。自分自身とは違うけれども魂は同じ存在だと。ならば、彼女が行った先の世界にいる『沢田綱吉』が悪い人間という事はあり得ません。」
「それに、刹那くらい強いヤツが現れたら必ずオレが見付けて目を掛けるからな。会わないなんて、あり得ねぇぞ!」
「クスッ。そうだね。大丈夫だよね。刹那なら。」
月はもう満月に戻っており、辺りには静けさが広がっている。今夜の出来事がまるで嘘のように――。
そう、これがこの物語の全ての始まり――