リクエスト小説

□「好き」の心をもう一度
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嬉しそうな母親に水を指す訳にもいかず、大人しく恭弥とともに奈々に見送られる。


…といっても、半ば無理矢理恭弥に丸め込まれて、恭弥とともに登校する羽目になってしまったのだが。



「…どうして、俺の家が分かったんですか?」

「下調べは完璧にやる主義だからね。」

「…そうですか。」


恭弥はやはり学ランを着ており、並盛中学規定の制服を着ていない。

『ダメツナ』と有名な沢田綱吉と一緒に歩いているだけでも目立つというのに、学ラン姿は更によく目立つようで、先程から周囲の生徒から発せられる好奇心の目が痛い。


「そういえば、眼鏡はもうつけないんだ?」

「…貴方が取り上げてしまったので、つけられないんです。」

「そう。それは悪い事をしたね。」


そう言いつつも、恭弥は全く悪気もなく平然としている。


つきそうになるため息を、綱吉は直前で飲み込んだ。



「…聞かないんだ?昨日の事。」


どうして君に口付けたのか。


「…、どうせ、嫌がらせでしょう。」

「、嫌がらせ、ね。」


二人は並んで歩いているが、その間は人一人分の距離が空いている。淡々と話す二人の会話に温度はなく、暖かみを感じない。


「貴方は俺の事、別に好きでもなんでもないでしょう?」

「…そう思ってたんだ?」

「…貴方の気持ちなんて、どうだっていい。俺は貴方の事、なんとも思ってませんから。」


学校が見えてきた所で、もう話は終わりだと言うように綱吉は早足で自身のクラスへと向かう。


「待ちなよ。」


恭弥を置いてさっさと行こうとしていたのだが、恭弥に腕を捕まれたため、綱吉は不機嫌そうに恭弥を睨む。


「…なんですか。」

「僕の事をなんとも思ってないという事は、嫌いでもないという事だよね?」

「…、」

何も言わない綱吉に、恭弥は口角をあげる。


それならば、


「それなら、僕は君を必ず堕としてみせるよ。」

「…は?」


綱吉は、いきなりの恭弥の言葉に、首を傾げた。


全くもって、意味がよく分からない。


「僕は君の事が好きだよ。愛してる。」

「なっ!!///」


いきなりの告白に、思わず赤面してしまう。


そんな事、今まで一度も言われた事なんてない。


恭弥は綱吉の耳元に唇を寄せると、囁くように言葉を紡ぐ。


「君を、僕だけのものにしてみせるよ。必ずね。」


絡みとって、離さない。


「ぁっ…し、知らない!!///」


突き飛ばすようにして恭弥から離れると、綱吉はそのままクラスへと走って行った。


「…ホント、可愛い。」


クスクスと笑いながら、恭弥もまた歩き出した。









「最悪だ…」


珍しく遅刻しなかった綱吉に、クラスの生徒たちは目を丸くしながら綱吉を見ていた。

しかも、いつもは引っ掛かる恒例の朝の足掛けにも引っ掛からなかったのだ。


嫌というほど感じる視線に、綱吉は俯く。やはり、眼鏡がないのは落ち着かない。頬の熱さもなかなか引かないので、分かる。自分は今、絶対に赤面している。


(あれしきの事で、動揺してどうする!)


そう思ってみても、なかなか熱は引いてくれない。


暫くの間机の上に突っ伏していようとした所、ざわついていたクラスがいきなり静かになった。

不信に思い顔を上げると、目の前には笑みを浮かべた恭弥の顔。


「やぁ。」

「な!!ι」


叫びそうになるのをなんとか堪える。

周囲の生徒たちも困惑しているのを感じながら、綱吉は疑問を口にした。


「なんで貴方がこのクラスにいるんだよ!!」


貴方のクラスは隣だろ?!


「だって、つまらないんだよ。綱吉がいないクラスなんて。という訳だから、僕も今日からこのクラスにいることにするよ。」

「そんな勝手、許されるわけがないだろ?!」

「昨日のうちに、担任には伝えといたよ。了承も得た。ちなみに席は君の後ろね。」


そんな恭弥の言い分に、綱吉と生徒たちは絶句した。


そんな中、クラスの扉がガラリと開く。
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