リクエスト小説

□幸福は突然に
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「…ワォ」

「……」


失敗した。よりによってこの人にバレるなんて…ι



遡る事2時間前――

***

キーンコーンカーンコーン…


「…ふぁ〜。やっと帰れる!」


最終下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く中、沢田綱吉という少年は暢気に欠伸をする。

教室には彼以外に人はいない。

何故綱吉少年は残っているのかというと、成績があまりにも悪く、先生に補習を言い渡されたからである。先生は先生で綱吉にあらかた簡単に数学の説明をした後、綱吉に数学のプリントを渡して職員室へ行ってしまった。なにやら他にも仕事があるらしい。


しかし、本来この少年に補習なんて必要ないのだ。何故なら彼は…


「適当に空欄埋めてさっさと帰ろ。…あ、でも補習は面倒だからある程度は正解の答えを記入しとくか…」


何故なら彼は、所謂天才少年だからである。







彼は普段、勉強もダメ、運動もダメなダメダメ少年を演じている。今まで誰も彼の演技を見抜けた者はいない。
それ故に彼のダメさはクラスどころか学校中に知れ渡り、彼に『ダメツナ』というあだ名までついてしまった。



ここまで徹底的に演技をする理由は、彼が理解したからである。



この世は異端な存在を決して認めない事を――




彼は、3才の頃から既に何でも出来た。

哲学の本も理解しながら読めたし、父親に戯れで教わった武術も成人男性顔負けな程の強さを持っていた。

母親の奈々は結構天然な人なので「ツッ君は凄いわね〜」と誉めてくれたが、周囲はそう思わなかったらしい。

綱吉は大人達に気味悪がられ、同年代の子ども達とも馴染まなかった。


そして5才になった頃、マフィアから命を狙われたのだ。何でもイタリアの巨大マフィアである『ボンゴレファミリー』の次期ボス候補だという事から、ボンゴレの敵対ファミリーが暗殺を企てたらしい。


その時に彼は自分が初代ボンゴレボスの来孫だという事に気付いた。もう既に超直感は開花しており、理解する事は簡単だったのだ。

それから綱吉は『ダメツナ』の演技を始めた。奈々を危ない目にあわせないように。自分がマフィアのボスになる事も彼は嫌だったので、徹底的にダメな人間を演じたのだ。

それなりにダメライフをエンジョイしていた。しかし、中学に入学してから暫くしてボンゴレから家庭教師として、最強のヒットマンであるリボーンが派遣されてきたのである。

どうやら他のボス候補が全員死亡し、九代目の息子も行方不明という事で綱吉に白羽の矢が立てられたらしい。初代の直系なので血統も申し分無い。

綱吉はそれでもボスになりたくなかったし、何より家族以外は信じられなくなっていた為リボーンに対しても『ダメツナ』として接した。

おかげで家でも演技をする羽目になったのである。






「…はぁ。『ダメツナ』の演技も結構疲れるんだよな…ι」


プリントを職員室に持っていき先生に渡した後、靴箱の前で溜め息をつく。空も大分暗くなっているので急いで帰らなければリボーンが学校にまで来る。
赤ん坊にまで馬鹿にされたくはない。せめて帰りの時間は心穏やかに過ごしたい。


そう思いながら綱吉は学校を後にした。







大分人通りが少なくなった道を歩く。この道は昼間はまぁまぁ人が通るのだが、暗くなると途端に人通りが少なくなるのだ。そしてガラが悪い学生の溜まり場になる道なので暗くなってからはあまり歩きたくない道だが、家に帰るにはどうしても通らねばならない道なので仕方がない。


そして案の定道のど真ん中に数人のガラが悪そうな学生が煙草を吸いながら座り込んでいる。


(うわぁ…嫌な予感ι)


綱吉は他の子どもと比べて、比較的に小柄だ。そして母親譲りの童顔の女顔である為、よく不良に絡まれるのだ。そして今、超直感が警鐘を鳴らしている。


「…あぁん?なんだこのチビ。」

「こっちをジロジロ見てんじゃねぇよ!」

「ヒィ〜!すみません!あの、ここを通りたいんですけど…ι」

「通りたきゃ通行料を出しな。」



やっぱりそう来るかι
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