リクエスト小説

□黄色い贈り物
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パタパタパタ


黄色い小鳥が校舎近くの木にとまる。小鳥はただじっと近くの教室を眺めている。

小鳥が眺める教室は2年生の教室。

窓側の席には授業中だというのに、机にもたれ掛かりながら寝ている鮮やかな鳶色の髪をもつ少年。


「ツナヨシ、ツナヨシ」


カタコトの日本語を喋る小鳥は少年の名をさえずる。


目の前の鳶色の髪の少年の名を――








「今日は良く寝れました!」

そう言いながらにこやかに微笑む少年に溜め息をつきたくなった。


時刻は昼休み。友人と、あるいは恋人と和やかに昼食を食べる時間である。


そしてにこやかに微笑む少年がいる場所は応接室。並盛中学校最凶の風紀委員長の根城である。


そしてそして、『ダメツナ』と有名な筈の琥珀色の少年の横には最凶である筈の漆黒の少年。


二人の少年は例えるならば草食動物と肉食動物である筈なのだが、仲良さげに昼食を食べる二人の空気は何処と無く甘い。

「…あのね、綱吉。風紀委員長である僕に堂々とサボりの報告してどうするの…。」


最凶の風紀委員長こと雲雀恭弥は珍しく困ったような表情を浮かべた。


対して『ダメツナ』こと沢田綱吉は楽しそうな表情を浮かべている。


「たまには恭弥さんの困った表情も見たかったんです。」


綱吉は笑顔で弁当を摘まんでいる。その表情に『ダメツナ』の面影はない。


「恭弥さんと恋仲だと学校中に知れ渡ってから、皆なにかと気を使ってくれるんですよね〜。」

「……ι」


やはり全校朝会の時に「綱吉は僕のもの」宣言をした事を根に持っているらしい。何処と無く笑顔が黒い。


「この前の朝会の事、まだ怒ってるのかい?」

「いえ?お陰様でこうして何の気兼ねもなしに恭弥さんと過ごせますし。」

そう言って綱吉は隣に座っている恭弥に寄り掛かる。

その表情は幸せそうだ。


「…そう。///」


恭弥もまた笑みを浮かべながら綱吉の頭を撫でる。


二人は何処から見ても「恋人同士」であった。








「これを機に『ダメツナ』の仮面も剥がしてみたら…」

「そんな事したら恭弥さんの恥ずかしい過去をバラします。」

「……。」


応接室にはしばらくの間固まる恭弥と茶を啜る綱吉の姿があった。




そして、そんな二人を一匹の小さな影が窓の外からつぶらな瞳で見ていた。


***


「ツナと雲雀って、結構お似合いなのな!」

「うるせぇ、野球馬鹿!!十代目が無理矢理雲雀の奴に付き合わされてるに決まってるだろうが!!」

屋上では野球馬鹿こと山本武と自称十代目の右腕こと獄寺隼人がこれまた仲良く昼食を食べていた。

「仲良くねぇ!!」

「誰と話してんだ、獄寺?」

「うるせぇ!大体何でテメェと一緒に昼飯食わなきゃなんねぇんだよ!!」

「ん〜、なんとなく?」

「ふざけんなっ!!」


朗らかに笑う武はある意味最強である。


「きっと今頃十代目は雲雀の野郎に無理難題を押し付けられてお困りになってるに違いねぇ…」

正確には、恭弥の方が困り果てているのだが…


「こうしちゃいられねぇ!待ってて下さい十代目!今から右腕であるこの俺が十代目を雲雀の魔の手からお救いを!!」

「まぁ落ち着けって獄寺。」

「Σうごぉっ?!」


応接室へと突入しそうな隼人の首もとを武は焦らず背後から掴む。そうなると当然前に進もうとしていた隼人の首は絞まるわけで。


「恋人同士の邪魔は野暮だぜ?」

「し、絞まってるんだよ!野球、馬鹿…!!」

「おっ、悪ぃ。」


目の前で顔を青白くさせている友人がいるというのに朗らかに笑う彼は、やはりある意味最強である。


「ん〜?」

ふと、武は近くのフェンスから下を覗き込んだ。

「…なんだよ。」

首をさすりながらも、武の行動が気になったのであろう。隼人もまたフェンス越しに下を覗き込む。


校舎近くに生えている木の中の一本に、黄色い小さな影が。


「あれって…」
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