リクエスト小説

□幸せなクリスマス
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街では色とりどりなイルミネーションが輝いている。


巨大なツリーに鮮やかな電飾。そして流れるクリスマスソング。



もうすぐクリスマス。



街中を歩くカップルや家族達がクリスマスの予定を楽しそうに話している。




そんな中、一人の少年が決意を込めた眼差しで巨大ツリーを見詰めていた。その表情はとても固い。

彼は、自身にとって一世一代の岐路に立とうとしていた。


(全ては楽しいクリスマスを過ごすためにっ!!)



とにもかくにも、寒空の下に少年は決意したのである。




***


「…」

「……」


カリカリカリ


放課後の応接室ではいつも通り、恭弥が書類を処理する際のペンの音が響いている。


そんな中、恭弥が淹れてくれた紅茶をちびりちびりと飲みながら綱吉は恭弥をじーっと眺めていた。


(カッコイイ…じゃなくて!い、いつ切りだそう?ιここはやっぱり仕事が終わるまで待って…)


そんな事をつらつらと考えていると、恭弥がふう、とため息をついた。


「…なに?」

「…へっ?!」


いきなり声を掛けられたことに、わたわたと焦る。恭弥はそんな綱吉を内心可愛いなと思いながら、仕事を一旦ストップさせた。


「何か僕に聞きたい事があるんだろう?」

「な、なんで分かったんですか?!」



なんでって…あれだけこちらに視線を向けられて、ソワソワとされれば流石に気付く。

あまりにも可愛らしすぎて内心身悶えていたのだが、仕事に集中は出来ない。…まぁ、仕事より恋人をとるが。



「気にしなくていいよ。で?何を聞きたいの?」

「え、えと、本当は雲雀さんの仕事が終わるまで待とうかと思ったんですけど…」

「うん?」


あちこちに視線をさ迷わせた後、一つ深呼吸。


よし!言うんだ俺!


「く、クリスマスなんですけど、二人で外に行きませんか?」

「…外?」

「はい!外です!」


恭弥と綱吉が付き合い始めて数ヶ月たつが、二人の逢瀬はいつもこの応接室内で行われる。

恭弥が淹れてくれる紅茶を飲みながらお菓子を食べ、恭弥とたわいもない話をしながらいちゃつく。

それが二人の「いつもの光景」なのだが、明後日は二人が恋人となって初めて過ごすクリスマスイヴだ。たまには街に出て恋人らしくデートがしたい。


だが、困った事に恭弥は…


「だめ。」

「ど、どうしてですか?!」

「今の時期に外なんか出たら、人が群れてるじゃない。」


極度の群れ嫌いだった。



「そこをなんとか!たまにはデートらしい事をしたいんです!」

「いつも通り応接室で我慢しな。料理もケーキも用意するから。」

「う〜!」


頬を膨らませている綱吉をチラリと見やった後、恭弥は再び仕事に集中した。




***


「はぁ。やっぱりダメかぁ〜。」


自室にて机に突っ伏しながらため息をつく。

覚悟はしていたのだ。彼が極度の群れ嫌いだと言うことは周知の事実だし、クリスマスとなれば、街中ではどこもかしこも群れだらけ。恭弥を外に連れ出す事など、奇跡に近い。


「それでも、デートしたかったなぁ…。」


街中や学校に行くと、皆がクリスマスの計画を楽しそうにたてている。


恋人と何処かに行くと嬉しそうに話す人や、あそこに行きたいとおねだりする人。


そんな話を聞いていると、無性に羨ましくなった。


クリスマスに補習なんて嫌だったから、リボーンに頼んで必死に勉強を教えてもらい、テストで赤点はなんとか免れた。

街で貰える店のパンフレットによく目を通しながら、恭弥と行ける事を夢みた。


机の上に並べられたパンフレットを見ながら、もう一度ため息をつく。


「必要なくなっちゃったなぁ。分かってはいたけど。」


パンフレットを纏めて引き出しの中に突っ込む。



「やっぱり俺、我が儘なのかな…。」
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