貰いもの部屋

□怪物使いツナ!
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僕はいつでも最強と謳われていた…
最強にして最恐にして最狂



それは意図的に仕向けた訳でもなく、それをさして望んでいた訳でもない。

しかし時の流れとは実に恐ろしいモノで、


自分の好きなように生き
気に食わない奴は名の知れた怪物使いだろうと、同類だろうと片っ端から吸い殺してきたからだろう…

いつしか吸血鬼ヒバリンに関わろうと云う自殺志願者はいなくなった。


その方が自分としても好都合だった。
もとから群れを嫌い、弱い草食動物を嫌い、一人で居ることを好む性格なのだと己で熟知していたからだ…

気が遠くなるような長い年月を過ごしながらも、僕は「終わり」を迎えるその日までずっとそうやって過ごすのだと思い、疑うこともしなかった。






疑うこともしなかったのだ
『ツナ』と出逢うまで一度も…−



***
















まさに「血を吸わせてくれ」の一点張り……−






吸血鬼ヒバリンは飽きもせず諦めもせず怪物使いツナの元へとやって来る
…毎回 仲間の怪物達が側にいない夜中の散歩中に…だ、

やって来ては呪文のように繰り返す



「僕に血を吸われなよ…、君を僕だけの永遠の伴侶にしたい。」



…−−と。






その度ツナはいやいやと首を振った…。
理由は『痛そうだから』や
『吸わせてやる義理がないから』とのこと…




しかし、ツナはそう言ってはいるが、本当はヒバリンに構われ執着されていることに満更でもないのだろう

何故なら答えは簡単にして明解 。



ヒバリンは会えば必ず血をせがんでくる、と本当は利口なツナなら解っているはずなのに ヒバリンと会うことを止めてはいない。

確かに、夜の散歩はヒバリンと出逢う前から「本当の自分」に少しでも戻れる時間を確保するために続けてきた事だが、本当にヒバリンを迷惑だと思っているのなら散歩を控えればいいだけなのだ。
だが、ツナはリボじいの監視が薄い時はほぼ毎日のように散歩をしている…

…−つまりそういう事なのだ。

だかそれでもツナがヒバリンを拒む本当の理由は『怪物使い』である自分と『怪物の頂点』であるヒバリンとの切り離せない敵対関係を気にしてだった。












もちろんヒバリンにはそんなことお見通しなので、そのことをちゃんと解っている。

わかった上でヒバリンはそんなツナにぞっこんなのだ
















「ねぇ、ツナ」



ツナ、とヒバリンは今宵も闇に溶け込む漆黒のマントと髪をなびかせながら艶やかに囁く。


一人大きな湖の辺で月を見上げていたツナは それを聞いて呆れたような顔をヒバリンに向けた






「また来たんですか?」

「当然でしょ、君 案外頑固なんだもの…」

「常識的に考えてムリな誘いなんですから、寧ろ断る事こそ当然なんじゃないですか?」

「ふ〜ん」









ヒバリンはツナの近くに座って自信に満ちた瞳でツナを見ながら言った。

その瞳は月光の反射で真っ黒にも透明にも見える、美しいものでした…



さすが最強の座に君臨する吸血鬼ヒバリン

いくらツナと言えどもその目麗しい姿に息を飲みこむ









「その常識とやらは知らないけど、別に問題無いでしょ?」

だって君、










「君、僕のこと好きでしょ」

「…は!?//な、何言ってるんですか!」




ありえません!
と、ツナは顔を真っ赤にして否定た

だが、それは逆効果…



ヒバリンはツナの反応を見て気を良くしたのか、ニンマリと口元で弧を描くと まるで大きな猫のようにツナに擦り寄っときたのだ。

それに慌てたツナはヒバリンから離れようとするがヒバリンが一言…−




「別に僕のこと意識してなければ、離れる必要なんかないよね?」


あぁ意識してくれて恥ずかしいんなら別だけど…


ヒバリンはツナの肩に頭を預けながらクスクスと笑いました

その様子は普段の彼では有り得ないほど無防備で、動言全てが幼い
口ぶりや彼の表情からはツナに対する愛情しか感じられず、それに気が付いているツナはますます顔を赤く染めるのだった。

***

「(ほんとに可愛い…)」





何故彼はこんなにも可愛いのだろうか?

本当は擦れていて抜け目など何処にも無いというのに 時々急に天然な事をしでかす、
触ったら怒るクセに触らなかったら、かまわられたがりの仔犬のようにそわそわとして、チラッとこちらを見てくるのだ。


…今だって
彼の肩口に耳を当てているせいでこの子の鼓動がとても速いのが良く分かる。

明かに僕に構ってほしいクセに恥ずかしがっている。だが、本人はそれを必死で隠して平常心を装いやり過ごそうとするのだ…





よりいっそう体を近づけてツナの首元に擦り寄ると
僕の髪が当たりくすぐったかったのか、ツナの体がビクリと震えた


途端 僕の嗅覚を刺激する彼の甘い薫り…−






「(いい匂い…)」


うっとりとしてしまう

目の前には無防備にも大きく開かれた赤のシャツから覗く美味しそうな首筋に、朱に染まった頬
そんな最愛の子がこんなにも近くにいる




「(…たまらない)」







何百年生きようと 感じたことが無かった他人へのこの想い、執着、独占欲、愛しさ、欲求…




あぁそうだね、やっぱり





「やっぱり君が好きだ…」






***
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