リクエスト小説
□貴方と共に…
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「…確かに、人の気配はしませんけど…」
「なら良いじゃない。それよりも綱吉、僕の名前を呼んで?」
左手を綱吉の腰に回し、右手で綱吉の頬を撫でながら恭弥は優しく請う。
「…しょうがないですね〜。」
綱吉は左手を恭弥の首に回し、右手で恭弥の頬を撫でる。
「俺も逢いたかったよ。…恭弥さん。」
そして二人はどちらからともなく、口付けを交わした。
***
資料室――
「あ〜っ、畜生!!広すぎんだよ!!」
「黙って掃除をしろ!」
「うるせぇ!!」
「なんだと!?」
「まぁまぁ、落ち着けよ獄寺。怒鳴ったって、掃除終わんねーぞ。」
「んなことは分かってんだよ!だけど十代目が心配じゃねぇか!今頃雲雀の奴にこき使われてると思うと…大体何で風紀委員が此所にいんだよ!!」
「お前達がサボらないように見張っておけとの委員長のお達しだ。」
「畜生!雲雀の奴、ぜってぇ果たす!!」
「だから落ち着けって獄寺。それにツナなら大丈夫だって。」
「何でそう思うんだよ!」
「だって、ヒバリがツナを見る時の目ってなんか優しい気がするんだよな〜。」
「「…は?!」」
隼人と風紀委員の声が重なる。
優しい?あの雲雀(委員長)が?!
「それになんだかんだ言ってヒバリはツナに暴力を奮わなくなったしな。朝だって俺ら殴られなかったじゃん。」
ニカッと爽やかに笑う彼は時々天然なのか鋭いのか分からない。
「ま、とにかく早く掃除終わらせて、ツナを迎えに行こうぜ!」
「わ、分かってらぁ!ι」
「い、委員長が、優しい…ι」
武の一言は、二人に結構なダメージを与えたようである。
***
黒いソファーに座りながら紅茶を飲む。隣には大切な人である漆黒の少年。テーブルには美味しいケーキ。
「…幸せ…」
「クス。それは良かった。」
「わざわざ街までケーキを買いに行かせたかいがあったね。」なんて事を言いながら髪を撫でられる。
やっぱり風紀委員に行かせたんですね。すみません、委員の皆さん…ι
きっと強面の委員達はケーキ屋に入る事に抵抗があっただろうし、ケーキ屋の人達は恐ろしかっただろうなと思いながら瞳を閉じて恭弥の肩に寄り掛かる。
「…この時間が…恭弥さんと過ごすこの時間が俺は大好きで幸せなんです。」
放課後以外は、こうして寄り添えないから――
「…やっぱり全生徒にバラさない?僕達が付き合ってる事。」
「…駄目、ですよ…貴方まで狙われる事になる。」
「僕は別に構わないよ。綱吉の傍にいられるのなら。」
恭弥はそっと綱吉を抱き寄せる。
「…それでも、駄目です。」
恭弥の腕の中ですり寄りながらも拒絶をする。
どんなに酷い事をしているのかなんて分かってる。
それでも――
「貴方が危険な目に合う事だけは、嫌なんです。」
貴方は俺の一番大切で愛しい人。
だから、俺のせいで貴方が傷だらけになるなんて耐えられない…
「ごめんなさい…」
ずっと一緒にいられない恋人でごめんなさい。貴方に迷惑をかけてごめんなさい。
「それでも、貴方と一緒にいたい…」
「僕もだよ…」
二人は夕暮れの中、ただ抱き締めあった。
***
「失礼、しました…」
隼人と武の掃除が終わったという連絡を受けた時点で恋人との短い逢瀬は終わる。
「また、明日の放課後に…」
「はい…」
そして扉を閉める音。
「…綱吉…」
彼を狙う刺客など、いくらだって咬み殺してあげるのに。
「…恭弥さん…」
いつだって、彼に逢いたい。彼と話したい。でも…
「あいつらに、恭弥さんの事を知られたくない!」
恭弥さんが傷付く事だけは、阻止しなければ。