リクエスト小説
□「好き」の心をもう一度
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クラス中が騒ぐ中、ふと少年が止まったのはある少年が座る席。
「…やっと、見付けた。」
「…、な、んで…」
黒い少年が止まったのは、綱吉の席。
綱吉は珍しく、相手の顔を真正面から眺めながら、呆然としている。
「あ、あの!もしかして隣のクラスに来たっていう、転校生ですか?」
「カッコイイ!!」
「なんていう名前なの?」
好奇心のためか、周囲の女子たちがいきなり現れた少年に声を掛ける。
いきなり現れた美少年に教室内は騒然となり、収集がつかなくなった。
「女子ってスゲーι」
「でも、ダメツナとどんな関係が…」
ガンッ!!
「うるさいよ。黙っててくれる。」
シーン――
少年が何処から出したのか、銀色に鈍く光るトンファーを机に突き刺したのだ。
ちなみに、憐れな机の所有者は、先程「ダメツナ」と口にした少年だ。
一瞬のうちに教室内を恐怖で支配した少年は、また綱吉に向き直る。
「久しぶりだね。僕の事は覚えてるだろ?雲雀恭弥だよ。」
「…、なん、で…ここにっ!」
「ずっと君を探してたんだ。君は何処に行くのか誰にも言わないまま引っ越したから、結構骨が折れたよ。」
「さが、してた…?」
何で今頃…俺は会いたくもなかったのに!!
「ねぇ、なんでそんな纏まりのない、のび放題な髪型にしてるの?それにその眼鏡。どちらも君には似合わないと思うけど。おかげで顔がよく見えない。」
「そ、んなの、貴方に関係ないっ…!」
「『貴方』じゃなくて『恭弥』。昔はそう呼んでたじゃないか。」
突然の状況に、クラス全員がついていけない。教師でさえ、『雲雀』の名が出た時から固まっている。
『雲雀』という名は、誰もが聞いた事があるというほど有名なのだ。
大手のホテルや飲食店、映画館といった娯楽関係から、不動産や果ては病院まで経営しているという会社、『雲雀』グループ。
その規模は巨大で、海外にまで進出している。
まさか、その雲雀グループの人間がこの街に来るなんて。
「ねぇ、綱吉。僕はさっきここに来たばかりなんだ。だから学校の案内してよ。」
「…俺はこれから掃除当番なので、無理です。誰か、別の人に頼んでください。」
綱吉はそう言うと、また俯いてしまった。だが、綱吉が人の頼み事を断ることなど珍しく、クラスの生徒たちは驚いて綱吉を見つめる。
「掃除当番なんて、そこの男子に任せときなよ。」
「Σえっ!お、オレ?!ι」
恭弥が指を指したのは、机が憐れなことになってしまった、先程の男子。
「…彼はこれから従兄弟が来るから、早く帰らないといけないんだよ。」
「そんなの、そいつが早く終わらせればいいだけの話だろう。」
「そういう訳には…」
「あ〜、いい!別に掃除当番くらいいいから!お前は早く案内してこい!」
「え、でも…」
「さ、沢田!いいから案内してきなさい!H.Rもこれで終わりだ!ι」
「そう。ならもう綱吉を連れて行ってもいいよね?」
「ちょ、ちょっと待って!ι」
先程の男子と教師からそれぞれ了承の許可を貰うと、恭弥は綱吉を立ち上がらせて腕を引っ張る。綱吉は半ば呆然としながらも、教室の外へと連れ出されていった。
***
「…ここが音楽室。」
「ふ〜ん。ちゃんと防音設備は整ってるんだ。」
室内に入って辺りを見渡す恭弥に、綱吉もまた室内に入って壁に寄り掛かる。
結局仕方なく、学校を案内しているのだ。
『雲雀恭弥』――
そう、恭弥は『雲雀グループ』の一人息子だとかで、昔から有名だった。
恭弥とは所謂「幼なじみ」という奴で、幼稚園、そして小学3年生の頃まで同じ学校だった。家も近所だったし、母親同士が仲良かったこともあり、恭弥とはいつも一緒に遊んでいた。
父親の先祖がイタリア人だったことから、綱吉の髪の色は鳶色、瞳の色は琥珀色で、よく周りから「異人」だと言われていた。でも、恭弥だけは綱吉のことをそんな目で見なかった。