触れる心
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帰宅後、砂名は何も言わず、夕飯も食べずに部屋に篭って寝てしまった。
『どう思ってるわけ。』
コトリ、とテーブルに簡単なつまみ兼、夕食を並べる。酒を片手に私を一瞥し、それに箸を伸ばす。
「どーもこーも、アイツが盗みなんざできる度胸ねぇのは確かだな。」
『……犯人が、いるってことだ。』
プシュッと私も酎ハイ缶のプルタブを引き上げて煽り、それらをつまむ。
「……………」
はぁ、とため息をつき、彼は黙々と飲んでは食い、飲んでは食う。
「いつまでも他人(ヒト)に甘えてちゃ成長できないんだよ。」
その言葉は何より、父親の言葉だった。
pipipipi………
ピピ ピピ ピピピ ピピピ
朝6時。けたたましく目覚まし時計が鳴るが、誰もそれを止めようとしない。
ついに痺れを切らした直樹が、未だ夢の中の砂名を蹴り起こす。
『ちょっと、朝からうるさい。』
朝食を作っている最中に聞こえる騒音に慌てて砂名の部屋に入った。すると二日酔いなのか、頭をおさえる直樹と状況把握が追いついていない砂名の姿。
「……砂名、お前今日俺の代わりに仕事行け。とっとと用意しろ。
『え……、』
そんなんアリなわけ?
「な…なんで…?」
「……」
「…………」
「なんでもだ
」
「は、はい」
黙り込んだ末、逆ギレ。反射なのか、砂名は素直に返事した。その後、砂名は不安そうに尋ねる。
「……、あ…あの…父さん…父さんは…俺の代わりに学校行くの…?」
「なんで俺が行かなくちゃなんねんだよ、メンドくせえ。」
私は、その発言にほっと息を吐く砂名を見逃さなかった。