壱之花

□代償
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「私を恨んでいるか?」

「いいえ」

 微笑んで答えても、貴方の顔に浮かぶ不信は晴れない。

「嘘だ…本当は私を許せないのだろう」

「ええ、許せません」

「うっ嘘だ!」

「おかしな人ですね…どの答えが欲しいんです?」

 思わず笑みが溢れる程に、うろたえる貴方は可愛らしい。

「…お前の本心が知りたい」

 本心…私の本心。

「知りたいですか?」

「ああ…」

「本当に?」

「教えろ」

 真剣な表情。蟄居の身でありながら人目を避け───最も敬愛する方の眼を盗んで私の前に現れた貴方。

「なら…教えて差し上げましょうか?」

「早く言え」

「…代わりに貴方は何を下さいます?」

「何、を…?」

「代償を払われるのなら考えても良いですよ?」

 
「代‥償?」

「そう、貴方が暴く私の本心に見合う、代償」

 手を伸ばし、髪紐を解く。

 はらりと艶やかな黒髪が流れ落ちる。

 美しい黒髪…その髪に指を絡ませ、ゆっくり口唇を寄せる。

 一度だって貴方から眼を反らさずに。

「…それでも知りたいですか?」

「…知りたい」

 ゆっくりと手を伸ばし、その頬に手を触れる。

 口唇を寄せる私の顔を見つめる貴方の瞳が閉じられて…



 ほら、貴方を絡め取る───


 

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