花 片
□跪いて…
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───いらいらする。
穏やかな笑みを浮かべる眼前の相手に眉を寄せた視線を投げ掛けたとて相手の笑みが解ける事はない。
昔はもっと些細な事で怒った癖に───
「ちっ」
扇で覆った口元から、舌打ちの音を洩らしてしまう。
「どうしました?」
その音に気付き声を掛けてくる…浮かべた笑みは同じまま。
ずっと笑んでいられると、何処まで真か解らない。
「おい、跪いて足を舐めろ」
何処までも尊大に傲慢に…流石に瞠目した相手に、やっと満足する。
何を言うのだと怒ればいい。
「いいですよ?」
だが一層艶やかに笑った相手はゆっくりと足元まで歩み寄る。
「貴方が望むのなら───」
膝に手を掛け跪き、柔らかな沓に包まれていた足を取り出して、躊躇う事なく口唇を寄せる。
慌てて引こうとした足は捉えられ動かない。
「‥っ!」
足先にくちづけられ、指先を口唇に包まれる。
柔らかな舌に指の間を擽られ、思わぬ声を溢してしまう。
衣の裾が捲れ、露になった箇所を舌が這い上がるのに身を震わせた。
「貴方が望むなら、一晩中…」
足を捉えたまま笑みを浮かべる相手に目を奪われる。
望んだのは自分……?