short dream
□君を助けるのは僕だけでいい
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「名無しさん、眠たいの?」
「んー…。別にぃ」
深夜の任務だけあって眠たそうな名無しさんにユーリスが声をかけた。
「そういう声がもう眠そうなんだけど。眠いなら早めにクォークに言って仮眠休憩取ってもらった方がいいよ。敵来たら危ないから」
「大丈夫だってー。ユーリスは心配性なんだから」
ふわわ、と欠伸をする名無しさんを見てマナミアが意味深な笑みを見せた。セイレンもそれに便乗する。
「名無しさんはここで休憩したらどうかしら? ユーリス、ついていてあげて下さいね。私たちで行ってきますわ」
「そーだよ。休憩は早めにとった方がいいんじゃねーの名無しさん?」
「ちょ……いいって私も行くから! その意味深な笑い方やめてくれる?」
「何だよ。つまんねーな」
「つまらないですわ」
「あーもう、二人ともうるさーい!」
からかわれ、若干目が覚めた名無しさんは先頭を行くエルザとクォークのもとへと走って行った。
後方とはかなりの距離が開いていた。彼女を見てエルザが首を傾げる。
「ん、名無しさん。どうかした?」
「マナミアもセイレンも意地悪よ……」
「いつも仲いいだろ? 何かあったの?」
「おいっ、静かにしろ。敵だ」
クォークの鋭い声が飛び、名無しさんは追いついてきたユーリスに引っ張られて岩陰に隠れた。
「何やってんの、気づかれるよ」
「今隠れようとしてたところですー」
クォークの合図と共に岩陰から飛び出して、詠唱に最適な場所を探す。
隅の柱と柱の間、そこに名無しさんは陣取って詠唱を開始した。
マナミアににじりよっていたリザードたちを一掃すると、名無しさんは再び詠唱を開始する。その時、エルザの声が耳に響いた。
「名無しさん!」
「どしたのエルザ……いっ!?」
思いっきり突き飛ばされ、石の床に背中を強打した名無しさんは上に覆い被さっているエルザの腕の隙間からオーガを視界にとらえる。
「怪我はない?」
「だいじょう、ぶっ!!」
ばんっと名無しさんに魔法をぶつけられて怯んだオーガにさらにユーリスが魔法を重ねる。倒れたオーガを見てエルザがほっと息をついた。
「ありがとねエルザ。油断してた」
「気にするなよ。名無しさんが無事で良かった」
どうやらオーガが何体かいるらしい。再び前線へ出て行った彼の援護をしようと名無しさんが詠唱を開始した時、後ろから手が伸び柱の影に連れて行かれる。
「僕さ、気をつけてって言ったよね」
「…………エルザが助けてくれたから平気」
「エルザが何だって?」
「ち…ちょっとユーリス? 背中痛いんだけど」
不機嫌な様子の彼に手首を拘束されて柱に押し付けられ、名無しさんは抗議の声をあげる。
いっこうに力を緩める気配のないユーリスは目だけで名無しさんを見下ろす。彼女も対抗するように目だけで彼の瞳と視線を合わせる。
至近距離での睨み合いの後、ユーリスがくいっと名無しさんの顎を上げた。
「何それ反そ…んんっ!?」
唇を塞がれ言葉が消える。
いつもより長めのキスに苦しくなり、もがいてみるが反応なし。
「君がほかの男に助けられてるから悪いんだよ」
「っはぁ……そんな屁理屈言うなら次はユーリスが助けてよね!」
「言われなくてもそうする」
本当は自分で助けられなくて悔しいだけさ。不機嫌な声とともに再びキスを落としたが、今度は彼女は抵抗しなかった。
「お熱いこった……」
「セイレン。覗き見はいけませんわよ」
「そう言いながら、マナミアもちゃっかり見てるよね」
「あら、それを言うならエルザさんもじゃないですか」
「だってクォークも見てるし」
「おい、バレたぞ」
洞窟中に名無しさんの悲鳴が響き渡るのはそれから一拍後の出来事だった。
(ぎゃあああ、いつから見てたのよっ!?)
(そんなところでいちゃついてるお前らが悪い)
―――
ツンデレなユーリスとツンデレなヒロインにしてみたが微妙に失敗した。お互いツンツンしてればいいと思う。