short dream
□二人で逃げようか
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「俺はお前を……」
「俺はお前たちを……」
クォークがゆっくりと瞼を伏せると仲間たちは走ってこの場を後にする。名残惜しそうに、エルザが一度だけ振り返った――……。
「なぁに死んだふりしてんのよクォークのバカ!!」
がっしがしと揺さぶられ、クォークは思わず目を開ける。目の前には懐かしい彼女が怒りの表情をして立っていた。
「なっ…お前……っ!」
「アルガナンと異邦のもの、二つの莫大な力を手に入れてる貴方が呆気なく死ぬはずないでしょっ!」
呆然とするクォークに構わず名無しさんは早口でまくし立てる。
「そうか……。お前には見透かされていたか」
「……当たり前だよ」
頭を撫でてやると、名無しさんは瞳を涙でうるませた。さっきまでの威勢のよさはどこに消えたのか、懇願するように抱きつく。
「早くしなきゃ……崩壊に巻き込まれて本当に死んじゃう。行こう。私と来て、クォーク」
「……それはできない」
「嫌だ。やだよ、そんなの」
「俺はもうエルザやみんなに顔向け出来ない。それに許されない事をしたんだ。ルリ島に戻っても……分かるな?」
ルリ島に無事戻れたとしても今まで通りの生活は出来ない。クォークは犯罪者として捕まってしまうだろう。
「お前は早く逃げろ。エルザたちに追いつけなくなるぞ」
「クォークが来てくれなきゃやだ」
「……我が儘言うな。お前もここで死ぬつもりか?」
「それもいいか…んっ!?」
冗談めかして言った言葉は口の中で消えた。泣きそうな顔をしたクォークが名無しさんをきつく抱きしめた。
「それだけはやめてくれ。お前は……生きろ」
「……ねえクォーク」
「何だ?」
「二人で逃げようか。ルリ島から離れて……どこか、遠い遠いところへ――……」
(本気で言っているのか)
(私はいつでも本気だよ?)
(……)
(さ、早く逃げよっ!)
(あ おい、名無しさんっ)
―――
こんな終わり方でもいいじゃん。え、ダメ?
細かいことは気にしなぁぁあい!
これ、私のモットーです。