short dream

□意外とみんなが優しくて困る
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「もう入ってもいいよなマナミア。大丈夫か名無しさんっ!」

「大丈夫だよ、セイレン。このぐらいへーきへーき」

「そんなだから大事になったのですよ! へーきへーきじゃありません。毒を受けたまま戦い続けるバカは名無しさんぐらいですわ!」

「あーん……マナミアごめん。でも治してくれてありがとね」

そう。
私は今までベッドに寝かされ、マナミアに集中治療を受けていた。任務でちょっとしくじって、毒を受けた私は立てなくなってエルザに担がれ、マナミアが待機している酒場まで帰ってきたのだ。

「ったく心配かけやがってー。どうしてこんな事になったんだよ」

ぎゅーっと抱きしめられながら説明を催促され、私は曖昧に話始めた。

「なんかね……。刃が腕にかすったの。ほんっとう、かすり傷なんだけど次第に気分悪くなって」

「それで毒って気づいたときには、ばたんって訳か」

「ごめん。迂闊だった」

「エルザさんが心配していましたわよ。ユーリスも。顔色が真っ青で身体が冷たかったから、いつ死んでもおかしくないと思って急いで帰ってきたって言ってましたわ」

「あー…いっしょ行った二人には申し訳なかったなぁ。ちょっと暫くみんなと顔あわせたくないわ」

絶対怒られるって。
特にユーリスとクォーク。
怖いです。
体調不良を理由にして女部屋に引きこもろう。

「おい、入るぞ」

「あら名無しさん、お客さんですわ。それでは私たちはこれで。どうぞクォークさん」

怖いほどににこやかな笑みを浮かべたマナミアによって扉が開かれてしまった。

「ったく……。名無しさん」

「ひいぃぃごめんなさい!」

部屋に入ってくるなり、頭の上まで引き上げていた布団をめくられる。怖ぁ!

「あまり無茶するなよ」

「へ?」

ぽんぽんと頭を叩かれた…だと?
もっとこう、さ。

だいたいお前は…とか。
不注意にもほどがある…とか。
仲間を危険にさらすな…とか。

怒られると思ったんだけど。

「ほぉーら、お前の好きなお菓子だ。買ってきてやった」

「わぁーくれるの? クォーク今日は優しいね!」

「今日は、とは何だ」

「嘘うそ。いつも優しいよー」

「単純でいいな、お前は。早く治せよ」

「はいっ!」

お菓子の包みをさっそく広げつつ笑顔でクォークを見送った私。開かれたままの扉を疑問に思っていると、エルザとジャッカルが入れ替わりで入ってきた。

「元気そうだね、良かった」

「心配したぞー名無しさん!」

「エルザごめんね、迷惑かけちゃって」

「いいさ。名無しさんが無事なら」

やっぱり、エルザは優しいよな。
ジャッカルに頭をわしゃわしゃにされてるが気にしないことにしよう。

「おぉっと、ユーリスも来てるから俺そろそろ退散しなきゃな。行くぞエルザ!」

「えっ何で」

ジャッカルに半ば引きずられながらエルザが出て行った。にしてもユーリス来てるのか。少し怖いな。

「……入るよ」

「どっどどどうぞっ!」

前言撤回。静かな声が凄く怖い!

「……はい」

「……ありがと……?」

「お見舞いだよ! ジャッカルが持って行けってさ」

ほう…?
疑問符を浮かべながら渡された花を見ていたらユーリスが早口で説明してくれました。

「今日は、ごめんなさい」

「無事で良かったね。……気をつけなよ? 今度からは」

「うん。ユーリス怒ってなさそうだね?」

素直に謝ってみたら思いのほか心配そうな声が帰ってきたので聞いてみる。

何だなんだ?
今日はみんな優しくない?
雪でも降るのか?

「まあね。……でも、さ」

「でも?」

「君が倒れた時、ほんとに心配したんだからね」

「……うん」

「もう、次はこんな事ないようにね」

「……うん」


真剣なユーリスの瞳にとらえられ、私は身動き出来なかった。






(意外とみんなが優しくて困る)
(誰だって、普段元気な君のあんな姿を見ると優しくもなるよ…)


―――


一人称で書くのって難しい。
やけに長い。そして逆ハー目指して書いたはず…なのにな?
何これユーリスが優しくなった!


 

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