short dream

□逃げ場をなくした
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「なぁエルザ。ちょいとユーリスに悪戯しに行かないか?」

「何それ楽しそう。私も入れてよ」


夜の酒場。
マナミアとセイレンとユーリスは早々に寝てしまった。

隙を持て余していた名無しさんは嬉々としてジャッカルの提案に乗ったのだった。

「おーおー名無しさん。愛しの彼に悪戯しちゃっていいの?」

「私を差し置いてジャッカルばっかりずるいもん!」

ジャッカルはこの前はクォークを標的にしていたが今回のターゲットはユーリスらしい。



「はいはい、おいで。じゃあまず手始めにだな、あの三つ編みをほどいてポニーテールに…」

「おい、止めとけ。燃やされるぞ」

「やるやるやるっ!」

クォークの注意も聞かず、名無しさんたちは階段を上って行く。


「にしてもさぁ、エルザも悪戯やるんだねー。意外」

「何言ってんだよ名無しさん。エルザはこう見えて意外とひでーぞ。この前タシャをバナナで転ばせてたろ」

「あははー。バナナで悪戯するの、結構楽しいよ」

「……エルザなにげに怖い」

「そんなに警戒するなよ。心配しないでも女の子をバナナで転ばせたりはしない」

一歩遠のいた名無しさんを傷ついたように眺めるとエルザは静かに扉を開いた。

「よーし。入ろうか」

「お邪魔しまーす……」

ゆっくりと忍び足で部屋に入っていった名無しさんはそっとユーリスのベッドに腰掛けた。

「うわぁーお……ユーリス髪ふわふわー」

すでに髪をほどいてユーリスは寝ていた。柔らかそうな銀髪と無防備なその表情に、名無しさんは思わず笑みをもらす。


「あははっユーリス女の子みた…………、い?」


どんがらがっしゃん、と扉の外で突然にど派手な音が響いた。

そういえばエルザとジャッカルがいない。何してるんだあの二人は。

「どこ行っ…うあっ!?」

「誰が女の子みたいだって……?」


いきなり視界が逆転したと思ったら、目の前には寝起きで不機嫌そうなユーリスが。

彼、起きたの?
エルザとジャッカル消えたんですけど。悪いの全部私になるじゃんどうしよう。

放心状態で言葉につまる名無しさんの上にユーリスが覆い被さった。

「……僕が男だってこと、分からせてあげようか?」

「え、ちょ…ユーリスやめっ」

「君が悪いんでしょ……」

「ごめんなさいもうしませんごめんなさい! だからストップぅぅぅ!」




(逃げ場をなくした)


(お前絶妙なタイミングで音立てたなー、エルザ)
(俺こういうの得意なんだよね)
(…とりあえず作戦成功だな)
(はははっ!あの二人もどかしいもん。明日が楽しみだね)


 

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