short dream
□恐れ入ります
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「こらそこのメイド、手を休めるな!」
「ちょっと休んでただけじゃないですか。ホワイトさんのけち!!」
きいぃぃ。
いつもあの人は私が休んでる隙を見計らって現れるんだ!
「ホワイトとは何だホワイトとは! 名前は知っているのだろう。ちゃんと名前で呼べ」
「嫌です! 白いんだからホワイトでぴったり、これ以上似合う名前なんてないわ」
私はルリ城のメイドだ。
そこら辺に立ってる人とお話ししたり、カナン様とお菓子食べたり、他のメイドとお昼寝したり、ほとんど遊びながら適当に仕事をこなしていた。
なのに、仕事中サボっていたところを見られたらしくあの白騎士様に目をつけられた。
それ以来何かと私は監視され、穏やかな毎日は崩れた。
めでたしめでたし…じゃないっ!
「貴様はいつもいつも、寝ているか話しているか何か食べているかだ。仕事はどうした」
「ホワイトさんこそ。私に注意を飛ばしている暇があったら訓練に精をお出し下さいませ。メイドの総括は貴方の仕事ではないでしょっ」
「ふん。私は今暇なのだ。貴様もどうせ暇だろう、付き合え」
「ぎゃーっ、どこ連れてくのホワイトさん!」
ずるずると引きずられる私を見て他のメイドや騎士たちが苦笑いを見せる。
この光景、もはや日常である。
「今日はどこに連れてかれればいいんですかね?」
「今日は図書館の蔵書整理をしてもらおうか」
え…。
狭いからサボれないし喋れないし本重いじゃないか。
「きゃあっ。誘拐されるわ! 誰か助けて〜」
「黙らんか」
ぺしりと叩かれ、私は大人しく引きずられることに決めた。
別に苦しくはない。
捕まれてるのは襟首ではなく腰のリボンだから。
……優しいのか厳しいのかよく分からん人だ。
「ほら、ついたぞ」
「うわー…。この万とある本を全部私に整理させる気ですかねぇ、ホワイトさん?」
「当たり前だ」
「白いくせに鬼畜!!」
泣き真似をしながら分厚い本を一冊ずつ確かめ、棚に戻していく。
「……もう疲れました」
「まだ五分しか経ってないぞ」
「疲れました」
「…………手伝ってやるから真面目にやれ」
「いぇい、頑張って下さいね!」
「ふざけるなら手伝わんが?」
睨まれたので仕事に戻ります。
ため息つきながら本棚整理してたら、ウル君が話しかけてきました。
「お姉ちゃん、またお兄ちゃんにいじめられてるの?」
「そうよぉウルくーん。ホワイトさんが私をいじめるのっ!」
「ダメだよお兄ちゃん、女の子いじめたら」
無邪気な子供の瞳に見つめられ、ホワイトさんは慌てて弁明し始めました。
「違うっ! 私は貴様をいじめたいんではなくて……その、貴様のことがす…」
「す?」
「す……」
「好き? ………………ではないですよね。ホワイトさんですものね。顔赤いですよ? 熱でもあるんじゃ」
「う、うるさい! 貴様は仕事に戻れっ!!」
「あっ……タシャさん」
あまりにも顔が赤くて逃げるように走り去ってしまったから、私はつい名前を呼んでしまった。
(トリスタ将軍図書館に用事ですか? 珍しいですねー)
(はは、あの堅物が顔を赤くして出て行ったからどうしても気になってな。君は凄い女性だ、とだけ言っておくとしよう)
(はい? …恐れ入ります)
―――――
元気めのサボリ魔ヒロイン×タシャでしたっ!
タシャは初恋設定でどーでしょう。