short dream

□よく言えました
1ページ/1ページ



「王様だーれだっ」

「おーっ、やった。あたし!」

「それじゃセイレン、ご命令は?」

「そうだな。ジャッカル、お前、溶ける氷のモノマネ」

「名前じゃなくて番号で指定すんだよ! しかも溶ける氷のモノマネってなんだ俺に喧嘩売ってんのか?」

「上等!!」

「違うでしょ。もー、セイレンの変わりに私が言いますわ。……四番の方」

「ってやっぱ俺かい!」


今は傭兵団のみんなで王様ゲームの真っ最中だ。人数が多いこともあり意外と白熱している。

……というか、みんなが変な命令ばっか出すからか。


「ところで次の王様は?」

「俺だ」

「ええクォーク? なんかえげつない命令出しそう……」

「なんだ名無しさん。お前に命令出してやろうか?」

「わ…っわたしの番号知ってるわけないもんね!」


余裕の笑みを浮かべるクォークから番号の書いたカードを隠すように、私はエルザの後ろに移動する。


「それはどうかな?」

「やだぁやだぁ。変な命令を私に当てないでよね」

「それが人に物を頼む態度か」

「……。当てないで下さい、お願いします」

「よし。分かった、三番が六番の髪型いじれ」


したり笑いから恐る恐る顔を背けた視線の先には二のカード。

何だ、そんな変な命令じゃない。
これなら私がやっても別にいいし。

ほっとすると同時にそう思った矢先だった。


「……僕?」

「ユーリス六番? あっはは、じゃあ三番は?」

「私よ! 任せてユーリス、可愛い髪型にしてあげるわ」

「は……はは、カナン。どこからそんな物持ってきたんだい?」


どこからか大きなリボンを取り出すカナンを見てエルザが苦笑した。ユーリスが頬をひきつらせて詠唱を始める。


「クォーク……。何でみんなの番号知ってるのよ!」

「ん? 勘だが?」

「嘘だ」

「そんなこと言うなら次はお前に……」

「止めて下さいお願いします」

「いい返事だ」


「ユーリス落ち着いて! カナンも! リボンはやめてあげようよ、な?」

「でもエルザ、こっちの方が可愛いと思うわ」

「まあ確かに……」

「やめろったら! カナン、君がつければいいだろ! エルザも同意するなよ!」

「えー?」


名無しさんとクォークがデジャヴのようなやり取りを繰り返してる横で、必死の抵抗もむなしくユーリスはきらきらとした髪飾りをつけられていた。

巨大なリボンがつけられなかったのは不幸中の幸いか。


「ユーリス……可愛いじゃん」

「名無しさん……。燃やされたい?」

「間違えた、格好いいです!」

「ったく……」


吹き出した名無しさんにユーリスがため息をついて次の王様を決めるべく棒を回収する。


「次は誰?」

「あっ私……!」


やっと運が回ってきた!
でも回ってきたら回ってきたで命令を考えなきゃいけないわけで。

私が考え込んでるとクォークが何やら口をぱくぱくさせてるのでとりあえずその通りに言葉を紡いでみることにする。


「二番が……四番に……キ、ス?」


あれ。今私、なんかとんでもないこと言ったよ?

自覚するより早く一気に辺りが騒然となる。


「うぇぇぇあたし!?」

「俺か。優しくしてくれよ? あーでもセイレンには難しいか?」

「やだよ! 誰がお前みたいな女たらしと!」

「んなこと言わずにほれほれー。ジャッカル様にキスしたいんだろ……ぶっ!?」

「うっせぇ!」

「強く殴りすぎですわ、セイレン。ジャッカル、大丈夫ですの?」

「クォーク! 私に何てこと言わせるのよ!」

「お前が勝手に言っただけだろ?」






(この策士め……)
(ほー。次はお前に当てようか)
(申し訳ありませんでしたクォーク様)
(……よく言えました)

  

────


傭兵団+カナンでほのぼのと。
恋愛系ばっかりの命令バージョンも作ってみたいけどこのメンツじゃ上手くいかなさそうな気がしますね!




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ