ポケモン

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研究所を出たら、沢山の人々に祝福を受けて、チヅルは逃げるように足を進める。
普段から児童院で子供達に囲まれるのは慣れているけれど、大人は…苦手。
目をつぶって早足で道を進んでいたら、自分でも気づかぬうちに1番道路まで来てしまった。


《1番道路》

「そういえば、ポケモンを貰ってたんだった」
オーキド博士から貰って以来全くボールに触れておらず、ちょっぴり可哀想だ。
バッグから赤と白のシンプルなコントラストのボールを手に取り、ふと作業が止まる。

「えーっと…モンスターボールの中央のボタンを押すん…だっけ?」

「そうだけど、基本戦闘時には投げると自然にポケモンが出て来るんだよ」
背後から声がしたと思ったら、赤い帽子を深く被った少年、タイキが現れた。

「ボールを投げるのはトレーナーの基本だよ?…チヅルさん、本当に図鑑所有者テストの合格者?」
さり気なく失礼な事を言っているが、悪気はない様子。

「面目ないです…」
笑って誤魔化すチヅル。
実際ユウタくんが成績トップでタイキくんが二位、そして私は三番目。
必死に勉強したけれど…トップ3に入れたのは奇跡的かもしれない。

「…僕が手本を見せますので、よく見ていてください」
草むらを歩き回り、野生のコラッタ二匹現れる。リュックから慣れたようにボールを取り出すと、そのボールを地面に叩きつける。中から現れたのは元気一杯なゼニガメ。
見よう見まねでチヅルもボールを投げると、中から大人しめなフシギダネが現れた。

「ふーん。チヅルさんはフシギダネなんだ」
ポケモン図鑑を取り出して、フシギダネに向ける。

フシギダネ たねポケモン

うまれてから しばらくの あいだは せなかの タネから えいようを もらって おおきく そだつ

突然片言で喋りだした図鑑にビクッと震えるチヅル。

「あぁ、心配しないで。これはこういう機械だから。こうやってポケモンのデータを記録してページを埋めていくんだ。僕達の目的は覚えてるでしょ?」

「全国図鑑の完成…だよね?」

「そう、よく分かってるね。バトルとか大丈夫?」
バトルも碌にやったこと無いチヅルは首を傾げるばかり。
まるで先生と生徒のような関係。

「だったら…さっそく、あのコラッタで戦闘に慣れてみようよ」
ゼニガメとフシギダネが戦闘体勢に入る。

「草むらに入ると野生のポケモンが現れる。僕はまず図鑑をかざして情報を集めて、その後戦闘をしたり、捕まえたりしてる。
戦闘の場合は、ポケモンに技の指示を出して、捕まえる場合はポケモンにボールを投げる」
ゼニガメがコラッタに体当たりして怯む。そしてフシギダネがもう一体のコラッタにツルのムチで叩きつけると、逃げ出す一体のコラッタ。その隙にタイキはボールを投げつける。
そしてボールからカチッと音が鳴った。

「これでポケモンを仲間に出来る。出来るだけ体力減らして状態異常にすればもっと捕まりやすいから」
捕まえたコラッタの入ったボールをリュックにしまう。

「僕が教えられるのはこれで全部。じゃあそろそろ僕、オーキド博士にお使い頼まれてるから」
礼儀正しくペコッと頭を下げたタイキは、ゼニガメをボールに戻してマサラへと帰って行った。

「ありがとうタイキくんー」
手を振ってタイキの背中にお礼を言うと、彼は一度振り返って軽く頭を下げた。


「フシギダネ」
ボールから出したままのフシギダネに呼びかけて、同じ目線になって笑いかける。

「あなたは私のパートナー、私はあなたのパートナー。これから色んな事があるだろうけど、よろしくね」
手を差し出して握手を求めるチヅル。
すると朗らかに笑ったフシギダネは、チヅルの手に前足をちょこんと乗せた。









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