ポケモン

□3
1ページ/3ページ


「ねぇ、あの噂聞いた?」

「聞いた聞いた! 最近トキワの森で黄色く光る物体が暴れ回っているってヤツでしょう?」
ふと、チヅルの耳に届いたのは今トキワで噂になっている『謎の黄色い光の物体』というトキワの森に現れる奇妙な物体の噂。
チヅルもそれを小耳に挟んでいて、少し興味を持っていたのだ。
フシギダネを抱えてポケモンセンターから外へでると、のどかな鳥ポケモン達の囀りが街に響く。



「さぁ、行こっかフシギダネ?」
フシギダネに視線を移すと「ダネ!」と力強く鳴いた。
そしてトキワシティを足早に駆け抜けていった。












《2番道路》

ニビシティへと続くこの道、近くにトキワの森があるせいか虫ポケモンが多く生息している。
それ以外は極平凡な静かな道路だ。
そんな道をチヅルとフシギダネだ歩いている。

「キャタピーにビードル、トランセルにコクーン。いっぱい図鑑に登録できたね」
図鑑に目を通しながら満足げにしているチヅル。
そんな彼女の前にはトキワの森への入り口を示す看板が立てられていた。

「ここがトキワの森…」
バッグをぎゅっと握り締め、一つ呼吸をおいて一歩足を前に出した。






《トキワの森》

緑々しい草木が生い茂るこの森は天然の迷路とも呼ばれていて、一度迷ったら一生出てこれないと囁かれているそれはそれは広大な森。
そして噂の『謎の黄色い光の物体』も…。
太陽光が木立に遮られ、昼にもかかわらず薄暗い。
チヅルとフシギダネ、辺りの様子を伺いながら前へと進んでいく。すると…

「ダネ…!」
急にフシギダネの目つきが鋭くなった途端、チヅルの前に乗り出した。
そして前方から物凄い速さでやって来た針のような物体にフシギダネがはっぱカッターを繰り出した。
見事命中して針を撃ち落とすと、近くの草むらからガサガサと動いて…。



「あ! ごめんね。大丈夫だった?」
現れたのは大きな麦わら帽子を被って虫かごを首からぶら下げて、一回りも大きい網を両手に握った虫取り少年と、横には…。

「そのポケモン。あなたの?」

「そうだよ。僕のスピアーさ! こいつ気合い入っちゃって君を襲ったと思うんだ。本当にごめんね」

「ううん。気にしないで」
深く頭を下げた少年に顔を上げるように言うチヅル。
すると、バッグにしまってあったポケモン図鑑がピコンピコンと機械音を発した。




スピアー どくばちポケモン
どんな あいてでも きょうりょくな どくばりで しとめてしまう。
たまに しゅうだんで おそってくる。




図鑑がスピアーを登録して、生態を説明し出す。

「な…何それ!? 喋った!!?」
ポケモン図鑑を始めて見るのか、少年は興味津々になりながら図鑑を見つめる。

「これはポケモン図鑑って言ってね。ポケモンのデータを記録しておく物なの」

「データを…?」
少年が腕を組みながら難しそうな顔をした。やがてポンと手のひらを拳で叩いて何か閃いたようにチヅルを見る。

「お姉ちゃんちょっと協力してくれない?!」
目をキラキラと輝かせながら、少年がチヅルの手を引っ張った。













.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ