作品

□こんなティッツァーノは嫌だ
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「……クアーロ、スクアーロ。しっかりして下さい、スクアーロ!」

ううん、と音を鳴らして重いまぶたを持ち上げる。ぼやける視界の中、心配そうな声を頼りに意識を浮上させると、俺の顔を不安気に覗きこむティッツァーノと目が合った。

「!!ティッツァー……ッつぅ!」
「ああ!ダメですよスクアーロ、もう少し寝ていなくては!」

そう言って、起き上がりかけてズキッと痛む頭を押さえた俺をそっと制す。
どうやら俺は、ティッツァーノの膝枕に寝かせてもらっていたらしい。

「覚えていますか?あなた、掃除中にいきなり倒れたんですよ?」
「掃除中に……?」
「ええ。……すみません、そんなに疲れが溜まっていたとは知らずに働かせてしまって…」
「いや、いいんだ。それよりティッツァーノ、すまない。掃除をするつもりが逆にキミの部屋を散らかしてしまって…」

気まずく思いながらもそう言うと、ティッツァーノは変な顔をしてこちらを見た。

「何を言っているんです?あなた、リビングで掃除を始めたとたんに倒れたんですよ。私の部屋にはまだ入っていないはずです」
「へ?」
「……スクアーロ、あなたやはり倒れたときにどこか打ったのではないですか?なんだったら今すぐ病院に…」
「あ、いや……ごめん。ちょっと混乱してて。俺の勘違いだったみたいだ。ハハッ、よく考えればあんなこと有るはずがないのになあ」
「あんなことって?」
「ただの夢だよ。キミが気にするようなことじゃない、変な夢。内容は秘密だけどな」
「フフッ!なんですか、それ」
「なんでもないって!それよりティッツァーノ、腹減っただろ?まだ作り置きのソースが残ってるはずだからパスタでも茹でてくるよ」
「いえ、お腹はあまり減っていませんから……もう少し寝ていてもいいんですよ?」
「もう大丈夫。それに俺に気を遣わなくてもいいんだよ、朝メシもまだ食ってないんだろ?ティッツァーノのためなら怪我なんてどうってことないさ。俺はキミを愛しているからな」

笑って言うと、ティッツァーノは自分もだというように薄く笑ってくれた。
甘い雰囲気に調子に乗った俺は、柔らかく持ち上げられた魅力的な唇に軽くキスを落として、俺のどこが好きなんだ?と聞いてみた。

「強くて落ち着いていて、頭のいいところですよ」

そう言って、ティッツァーノはにっこりと笑った。
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