作品

□きみにとどかねえ
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「……やりすぎだろ、ありゃあ」

ソファに腰掛けて新聞を読んでいたソルベは、ばさりと閉じたそれをテーブルに置くと、腰に抱き付いてウトウトとしているジェラートの髪を梳きながら苦笑した。

「リゾットで遊ぶのもそのへんにしとけよ。一応リーダーだぞ」
「だから面白ぇんじゃねえか。いちいち反応が素直なんだよ、あいつは。可愛いったらありゃしねえ」

クツクツと笑って、テーブルの上に乗ったままの手付かずのカップを手に取った。

「ったく、せっかく淹れてやったのに残していきやがった。飲むか?」
「いいや、遠慮しとく。お前の愛がこもったコーヒーなんざ飲んだらジェラートにもリゾットにも申し訳がたたねえよ」

肩をすくめて言うと、馬鹿言ってんなよ、と笑ってコーヒーを一口すすった。

「でもまあ、マジでそろそろ受け入れてやったらどうだ? あの調子じゃあまた引きこもるぞ、あいつ」
「そうだなあ……それも困るし、そろそろいいか。もう十分楽しんだしよ、焦れるあいつ」

飲み終わったカップを簡単に流すと、プロシュートは上着を羽織った。

「ちょっと紅茶買ってくる。プロポーズはその後だ」
「お前のほうからするのか?」
「ったりめえだろ? 好きなやつには正々堂々自分から。じゃねえとイタリア男の名が廃るぜ」

じゃあな。
財布をポケットに突っ込んだプロシュートを見送って、ソルベは天井を仰いだ。
その向こう側。ベッドに倒れ伏している男を思って声をかける。

「気をつけろよ。ありゃあほとんど毒婦だ。これから苦労するぜぇ? ……ま、せいぜい遊ばれてやるんだな」

ククッと笑ったソルベはもう一度、ジェラートの髪を梳いた。




End.
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