作品

□ボツ拍手『お題:AV』
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『私がいるのにそんなもの見るなんて最低ッ!』
『お前こそ俺の留守中にタンス漁るなんて何考えてんだッ!』

そんな不毛な争いがテレビから聞こえてくる。
なんのことはない。彼女がいるにも関わらずAVを隠し持っていた男と、わざわざ部屋を漁ってそれを見つけ出した女が、互いに自分を棚上げして罵り合っているのだ。
こういった下らない番組を、メローネは好んで観た。

「ひどいよねえ、これ」
「どっちがだ?」
「女に決まってんじゃん」

ふん、と鼻を鳴らしたメローネは、心底嫌そうに画面上の女を指す。

「勝手にケータイ見るとか部屋漁るとかさあ、俺そういうの絶対無理」
「お前は見られちゃ困るもんばっか持ってるからだろ?」

ククッと笑ったプロシュートは、「いい加減アダルトグッズを経費で落とすのやめろよ」と言って読んでいた雑誌をテーブルに置いた。

「えーヤだよ。アレは仕事に必要なモノだもん。……ていうかプロシュートは嫌だと思わないの? 漁られるのはもちろんだけどさあ、AVなんて男なら持ってるに決まってるじゃない。ねえ?」
「はあ? んなもん持つより街出て適当に声かけたほうが早いだろ」

言うと、メローネは「わあ、女の敵だねっ!」と目を剥いた。

「お前にだけは言われたくねえよ。……ま、最近じゃあそんなやんちゃはしてねえけどな?」

わざとらしく声を大きくしてソファ越しに振り返る。キッチンには、面白くなさそうな顔をして三人分のコーヒーを淹れているリゾットがいた。

「おら、拗ねんなよリゾット」
「……別に拗ねているわけじゃない。ただ、そういった不道徳なことは控えるべきだと…」
「だから今はしてねえって。おー、美味そうじゃねえか、このコーヒー。グラッツェ」
「グラッツェ、リーダー。……そだ。リーダーはさあ、どう思う?」
「何がだ」
「あれっ、観てなかったの? テレビ」
「テレビ……ああ、ビデオがどうたらとかいうアレか?」

合点がいったという様子で頷いたリゾットは、最後に運んできた自分用のカップをテーブルに置いてぽすっと浅く腰掛けると「どっちもどっちだろう」と肩をすくめてみせた。

「えー? どう考えても女のほうが悪いと思うけどなあ」
「だが相手を不快にさせたという点では男もそう変わらないだろう。争いの元になるくらいならそんな下らん物は最初から捨てておけばよかったんじゃあないか?」
「何それー。リーダーも男なんだからさあ、AVが男に必須なことぐらいわかるでしょお?」

不満そうに口をとがらすメローネは、それでも不思議そうに首を傾げるリゾットにため息を吐くと、自分の左側に座ってクツクツと笑いを堪えている男に絡みついた。

「ねープロシュートー、リーダーてばあんなこと言うんだよおかしくない?」
「ばぁか。お前なあ、あの堅物がAVなんて持ってるわきゃねえだろ? 青春を復讐に費やした男だぜ? 最近ようやく思春期突入なんだよ」
「げっ……マジで?」

奇怪なものでも見るような目で、それ以上は会話に参加しようとせずズズッとコーヒーをすするリゾットを見る。
それに答えたのはまたしてもプロシュートだった。

「ま、こいつも今更AVごときじゃあ満足できねえだろうよ。……おいリゾット。それ飲んだら出るぞ」
「ああ。わかっている。メローネ、すまないが洗い物は頼んだ」
「はいはい。なに? 今から出掛けんの?」
「おう。デートだぜ、デート」
「馬鹿言うなプロシュート。ただの任務だろう」

呆れたようにジャケットを羽織るリゾットに、プロシュートは「ちったあ合わせてくれたって良いだろ」と肩をすくめてみせた。

「じゃあなメローネ、明日にゃ帰るから留守は頼んだぜ。なんかあったらリゾットに電話しろ」
「了ー解。あとさあプロシュート」
「なんだ?」
「ノロケたいなら先にそう言えばいいじゃん」

どういうことだ? 頭に疑問符を浮かべているリゾットを扉の外に押しやって、プロシュートはニッと笑う。

「いいじゃねえか、たまには俺もそういう気分になんだよ」
「"自分以外じゃ満足できない"なんて素で言える人初めて見たよ、俺」
「俺は事実を言ったまでだね。……オラ、リゾット! 余計なこと考えてねーでさっさと歩けよ! ヘマしやがったら承知しねーぞ!」

だんだんと遠ざかる二人分の足音。それと入れ替わるように近付いてきた陽気な足音に気付いてメローネは口角を上げる。

「次はホルマジオかあ。とんだノロケ暴露になりそうだなあ」

そう言って笑うメローネは、なんだかんだで物好きなのだった。





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AVいらない派の二人。
最近やっとリゾ→プロじゃないリゾプロを書けるようになった。気がする。
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