作品

□ミオ・マンモーニ
1ページ/2ページ

「風邪か」
「……そ。朝から全身クソだりー」
「……ひどい声だな」
「どうやら喉をやられたようだ。情けねーよな、いっつもペッシに自己管理はしっかりしろって言っといて自分はこれだぜ」
「大丈夫か?」
「大丈夫に見えるんならテメェは今すぐ眼科に行ったほうがいいな」
「……すまん」
「いい。テメェに人並みの気遣いを求めるほうが間違っていた」
「そう言うな。これでも心配しているんだ」
「……だったらまずは水の一つでも持ってきたらどうだ」
「なるほど。それは気付かなかった。…………ほら、プロシュート。水だ」
「ん……悪い」
「もう少し飲んでおけ」
「そうだな。今俺に必要なのは喉の潤いだ。…………あー……、あー、あー……。うん、少しはマシになった……か?」
「俺にはそう変わらないように聞こえるがな。ほら、口あけて見せてみろ」
「あー……」
「…………。ずいぶんと赤くなっているな。腫れてもいる。ただの喉風邪だとは思うが……それともお前、何か変なものでも口に入れたか?」
「あー……、そういやおとといお前のモノを咥えてやったっけか?」
「……喉が痛いと言うわりにずいぶんと口が回るじゃあないか。どうやら俺の助けはいらないとみえる」
「待て待て、ジョーダンだろうが。行くな。行くなっての。病人をそのまま放っとくやつがあるかよ」
「……ったく、病人なら病人らしくしていろ。くだらん下ネタを言うより先にすることがあるだろう」
「なんだよ、することって」
「自分の部屋でゆっくり休むことだ。……わざわざこんなところに出てきてまで俺の帰りを待っていないでな」
「…………」
「そんなに俺が恋しかったか?連絡の一つでもよこせばもう少し早く帰ってきてやれたんだが」
「…………あ?テメェ今なんつったよ。ずいぶんと自意識過剰な言葉が聞こえた気がするんだが」
「悪態吐くほど照れるくらいなら大人しく寝ていればいいだろう」
「ぁあ?テメェの目は節穴か。今の俺のどこをどう見たら照れてるって思えるんだ?」
「お前がそういった表情をしているときはものすごく不機嫌なときかものすごく照れているときだ。今は後者。違うか?」
「…………」
「そして図星のときにはたいてい黙って舌打ちをする。……さあ、気が済んだら自力で部屋に戻ってくれ。俺は人肌を恋しがっているマンモーニのために軽食を作ってやらなければならないからな」
「ハン、誰だぁ?そのマンモーニってのは。ずいぶんと情けないじゃあねえか。ええ?」
「そうか?俺に言わせれば可愛いものなんだがな。なんせそのマンモーニときたら普段はちっとも俺を頼ってくれない。本人が苦しんでいるときになんだが、弱っているときに真っ先に頼られると悪い気はしないな」
「へえ?なんだよ、ずいぶんと骨抜きだなあ、そのマンモーニによ」
「そりゃあ骨抜きにもなるさ。帰って早々心細そうな目で縋るように見つめられればな。今日一番に帰宅するのが俺だということも知っていたんだろう。わざわざ俺が見つけやすいところまで出てきて健気に帰宅を待っていたんだ。これを可愛いと思わずに何を……」
「あー、あー、わかった、もう何も言うな。降参降参。今回は俺の負けだ。黙って言う事聞いてやる。……ったく、どうも今日ばかりは頭が回らねえ。これ以上クチ開いても恥かくだけな気がするぜ」
「賢明な判断だな。喉風邪は黙って治すのが一番だ。薬は持ったか?俺は後からメシを用意して行くから先にベッドに潜っていろ。くれぐれも大人しくだぞ」
「言われなくても」
「ベネ。いい返事だ。ところでペンネってのは何時間茹でればいいんだ?」
「………………」
「ジョーダンだ。ペンネくらいは茹でられるからそんな目で見るな。昨日の残りのスープに入れて持っていく。ついでにイスと本の二、三冊でも持っていこうか。これから一晩付きっきりでの看病が待っているんだからな」
「………………ベネ。上出来だぜリゾット。それでこそ俺のアモーレだ」
「グラッツェ、ミオ・マンモーニ」





End.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ