偶然と出逢い

□口付け一つ、二つ、三つ…
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す、と戸を引いて部屋に入ると、
こちらに背を向けて寝転がっている留三郎が目に入った。

「留三郎?」

返事がないので傍によれば寝ているようで。
軽く留三郎の髪を梳いていた手を止めて、そろりと辺りをうかがった。

僕と留三郎の部屋であるからして他に人がいるわけはないのだけど。


くちびるに軽く触れるだけの口付け。


疲れて いるのかな、そんな事を思いながら留三郎の顔を見つめた。
自然と視線は唇に移って、もう一度口付ける。
今度は、先程よりもしっかりと。



体を離そうとして唇が離れた瞬間。
頭を押さえられ、驚きに開いた口に舌をねじ込まれ、絡め取られた。

一瞬、びくりと体が強張ったが、
舌を甘く吸われ、じんっとした熱と共に力が抜ける。


互いに離れて顔を見合い、どちらからともなくもう一度。
舌先で唇をつつかれて戸惑いながらも薄く唇を開く。

「…っ」

小さくもれた声も その舌に全て呑み込まれる。


口内を探るように舌が蠢く。
時々 舌を吸われたり甘噛みされて、
体がふるえる。


ものの数秒だったかもしれない口付けは
何時間も何時間もそうしていたようにも感じた。




ようやく唇が離れた時、体はしっかりと熱を持っていた。


あぁ、こんなこと知られたくない。
こんなにも求めているだなんて、
それこそ知られたら羞恥で死んでしまう。



「起きていたの?返事をしてくれれば…」

口付けなど、おそらくはしなかっただろうに
その言葉をぎゅっと呑み込む。


「起きたのは 口付けをされるほんの少し前だったからな」


そう少し笑いながら言う言葉は嘘か、否か。
こればかりは いつまで経っても判断(わから)ない。
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