偶然と出逢い

□口付け一つ、二つ、三つ…
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「それにしても愛(めづ)らしい、伊作(おまえ)の方から口付けなど」

留三郎は言いながら体を起こし、前髪を少し払った。
…たいして邪魔でもないだろうに。

すっと流し目で尋ねるあたりが
既に己は答えを知っているとでも言いたげで 気にくわない。


「僕からの口付けは 気にいらないかい?」

そう問えば 肩をすぼめおどけたように、

「まさか。あまりにも愛(めづ)らしくて驚いただけだ。
拒むなど、もってのほか。もう一度 欲しいくらいだ」


笑って寄越すその視線に ほう、と顔が熱くなり、
そんな表情(じぶん)を見られたくなくて、

「なら、もう一度」

口付けようと近づくと、ひらり かわして口を耳元に寄せ、

「もう一度 欲しいにゃ欲しいが、それじゃ足りん」

するりと腰を撫でられて、

「もっと深く。俺が 伊作、お前にするように」

にやり、笑ったその表情で、更に顔が熱くなり、
こくりと唾を呑み込んだ。


僕に、しろと?
あの熱くて深い口付けを?
とろけてしまいそうな口付けを、僕から?

























































「……いや、だ」


ようやく出たのはたったそれだけ。
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