好きな人と同じTV番組を観られるのは実は凄く幸せなことだ
ラヴだけじゃなくライクの意味の相手でもとても幸せだ
他愛もない段落を共有する心地好さは自分が内面のすぐ近くまで受け入れられているように感じる
内面まで踏み込むのは他人の仕事ではない
本当に薄皮一枚隣り合わせになれる相手はたった一人でいい
私にはその人が現れない
断言出来るのが悲しい
何故なら私自身が、目の前のおんなのこにべたぼれだからだ
『like it』
このこの名前は高鷹ちとせちゃん
私達は大体いつも私とちとせちゃんと佐東夏絵ちゃんと川崎未葵ちゃんの四人でつるんでいる
ちとせちゃんと未葵ちゃんが二組、夏絵ちゃんが三組で私が四組だ
一年の時は文理選択がまだで夏絵ちゃんを除いた三人が同じクラスだったから仲良くなった
夏絵ちゃんとちとせちゃんが幼なじみで夏絵ちゃんとも仲良くなった
という経緯だけど、
今見ると三人ばらばらで面白い
多分、きっと、性格が似てるのかな?なんて
似ているのなら嬉しいけれど、私には勿体無い三人だと思う
ちなみに此処は夏絵ちゃんの家だ
集まる時は大体そうなっている
何度もお邪魔しているから机に向かって座る位置も定着した
TVの正面が夏絵ちゃんと私で私の隣にちとせちゃん、その隣のTVに背を向ける位置に未葵ちゃん
いつもは勉強会という名目で集まるからTVを見ない
だからテキトーに座った場所だったが、見たい番組があると言い出した未葵ちゃんが一番見にくい位置に居るのはどうなのだろう
替わると言ったのに断られて仕舞った
結局彼女は広げた勉強道具に背を向けて座っている
体操座りとか可愛い
未葵ちゃんだけでなく全員がTVの方向を見ているがちとせちゃんは可愛らしく体操座りなんてせずに胡座で寛ぐように座っていて、彼女らしいなと思った
位置的に、自分以外の三人の姿を見れるのは私だけ
私もみんなと同じようにTVの方向を見ているけど…
好きな人と同じTV番組を観られるのは実は凄く幸せなことだ
だけどそんな幸せを放棄して
私は彼女の横顔を見る
笑ったり驚いたりたまに真面目な顔をして、みんなと話してまた笑って
と次々変わるちとせちゃんの表情
私は彼女の横顔を見る
(あぁ…、幸せだ)
†END†