ちとせちゃんと私にある共通点
今時珍しくもないちっぽけなことだけど
二人共 片親なこと
それが私達のちっぽけな共通点
・まいでぃあ・
母さんが女手一つで育ててくれた、というわけではないと私は思う
何故なら離婚は私が随分大きくなってからでしかもかなりの額の養育費を父さんから貰っていたからだ
ちとせちゃんの家は母子家庭というわけではないが別居していてお父さんとはなかなか会わないらしい
そうなったのはやはり最近で、私と同じだと思った
たったそれだけのことだが私は一方的なエンパシーを感じた
愚痴を言い合ったりもして、同じような境遇を楽しんだ
父親の悪口を言い合った
結婚なんてしたくないという意見が一致したことに喜んだ
某携帯会社の白い犬がお父さんならよかったのにと他社の携帯を使いながら言って笑った
そんな高校時代を経て、私はちとせちゃんを好きになった
私なら彼女を愛してあげられる
偽りの愛に溢れた世の中で本物の愛をあげることが出来る
男なんか下半身でしか物事を考えていない
でも私は友愛から親愛に至るまで全てをもって愛するし彼女の嫌なところ全てを愛しているし裏切ることは決してない
同じ性だからこそ彼女が求めるように甘やかしてあげられるし抱き締めてあげたい
ちとせちゃんが求めるもの全てをあげられる
ただ一つ問題があるとするならば
彼女は私を求めていないということである
彼女は私と違う、普通の性癖だ
その時点でもうアウトだ
俺、なんて一人称で男みたいな口調ではあるがあれでも女子力は高いし俺を封印してからは男にもモテるし付き合っていたことも実際あるらしい
マイノリティ
もう嫌だ
いつから自覚があったのか
私はマイノリティなのだ
彼女が好きでたまらない
愛しい
愛しい
愛したい
「坂内はなんで俺を好きになったの?」
「可愛いから」
「真面目に聞いてんだけど」
「真面目だよ」
顔だって好みド真ん中だけれど、惹かれた理由はそこだった
一方的なエンパシー
愛し合えない両親を見て育ったことからくる愛の枯渇
本当の愛なんてないのだという想いと
人間を信じられない心の闇
それらに惹かれた
なんて言えない
私が言えるのはただ一つ
「愛してる」
「あー…、…俺も」
私のためにマイノリティになってくれた彼女が今ではますます愛しくなるばかりだ
信じてくれた愛と求めてくれた私を全てあげたい
大好きだよ
ちとせちゃんが某携帯会社の白い犬のぬいぐるみを抱き締めるから、それを隣に退けて抱き締めた
†END†