Dream

□寒い日にはマフラーを。
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冷気がすぅーと身を包み、身震いする。背筋に鳥肌が立ち、思わず身を竦める。マフラーをしていない首元は寒く、首から徐々に体温が奪われていくような感覚に陥る。暖かくなりますようにといくら願っても一向に暖かくならない。それどころかますます冷え続けているように思えるのは錯覚か。いや、錯覚だと思いたい。手は冷たく既に感覚はなくなっていた。この冬最低気温ってどういうことだよと怒鳴りたくなる。こんな日に限って電車が来るのがこれほど遅いなんてと苛立つ。やっと来た電車は暖かく。少し表情が緩む。そんな一時の安息もつかの間。たちまち家の最寄り駅に着いてしまう。電車を出た瞬間再び冷気がわたしを襲う。せっかく暖まりつつあった首元がまた冷たくなる。ふわりと暖かいものが首にあたり 咄嗟に後ろを向けば、わたしより背が高く端整な顔立ちのがっしりとした男の人が、わたしの首にマフラーをかけてくれて。

「え、…あのー…。」
「寒いんだろ?やるよ」
「は…」

じゃ。と片手を上げて歩きだしていて。がっしりとした背中が見えなくなるまでずっと見ていた。


寒い日にはマフラーを。
(その日から毎日あの人を)(捜しているのは言うまでもない)

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