企画・捧げもの

溶ける前に連れ出して
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「祭りに行かないか?」


余り鳴らない携帯が珍しく鳴った。
何だろうと見るとメールが一件。
差出人はネズミで件名も無く内容もその一文のみ。
いつ?とか、どこ?とかそういうものが一切はぶかれた簡素な文。
だからという訳ではないけれど、それ以上に簡素な文、もはや単語で「行く」とだけ打ち込んで返信する。
するとしばらくもしない内にまたメールが入った。

「今日の18時半に学校の正門で。」

わかった、と返信しようかとも思ったけどやめる。
いつも電話やメールの止めどころがわからなくでずるずると引きずってしまうからだ。
つい先日にもそんな気にしすぎなくて良いんだとネズミに笑われたばかりだし。
時計を見ると午後3時を少し過ぎた頃だった。
ネズミはやっぱり今日も部活なんだろうか。
聞いた話だと夏休みの間はコンクールに向けての稽古と夏休み明けの文化祭への劇の稽古にと多忙らしい。
学校がある時よりも会う時間は減ってしまったがこうやってどこか遊びに行く機会が増えたのはやっぱり嬉しい。

思えば今年になってはじめての祭りだ。
何を食べようか、なんて思いながら母さんに今日はご飯は大丈夫だと伝えに行くとしよう。
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