企画・捧げもの

来世で逢いましょう
1ページ/1ページ

わかっている
僕は花魁だ
1人の人物に、恋をしてはいけない
わかっている、
わかって、いた
でも、あの瞳に
僕は囚われた…


「来世で逢いましょう」


たまに此処にくるお客さま
真っ黒の髪に、強い光を持った、漆黒の瞳
身のこなしは優美で、声は高らかに響く
ひどく、美しい人
それが第一印象




「紫苑」
「なんですか、お客さま」

「紫苑」
「……何、ネズミ」

僕がお客さまーーーネズミを名前をよんだら、彼は嬉しそうに笑う

「紫苑」
「さっきから何なのさ?」

「好きだ」
「…」

「好きだ、紫苑」
「……僕は花魁だ」

「でも、好きだ」
「……」

ネズミは僕を好きだと言う
僕も、ネズミが好き
でも、花魁という言葉が、僕とネズミを隔てる
花魁の僕は汚い
ネズミは、美しい
決して、交われない僕とネズミ
好きだと言えたら、どんなに楽だろうか?
でも、言えない
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか
彼は来たら必ず、僕に愛を囁く




「紫苑、俺は紫苑が好きなんだ、花魁だろうと、好きなんだ」

「ネズミ……僕、だって、」

僕だって、?
駄目だ、その続きを言ったら
もう、後戻り出来なくなる



「…ネズミ、僕は君が嫌いだ」
「…紫苑?」
「悪いけど、帰ってくれ、他のお客さまがいるんだ」
「………わかった」


ネズミが帰った後、後悔した
僕はネズミを傷つけた
きっとネズミは二度と来ないだろう
今まで僕に愛を囁いてきたネズミに、やっと返した偽りの返事だったから
でも、これで良かった
ネズミと僕は、住む世界が違うから
でも、せめてもの願い



「来世で逢いましょう」

(僕を好きという彼に、)
(僕は嘘を囁きました)
(でも、来世では、必ず好きと言います)
(だから、来世でも、僕に愛を囁いてください)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ