SSS

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瓶底眼鏡紫苑さん学パロ。


未だかつて初対面でここまで強烈なインパクトをおれに与えた奴がいただろうか。
瓶底眼鏡なんて漫画や小説の向こうにしかいないと思っていたのに。
いた。
いたよ。
ありえない。
いや、瓶底眼鏡もありえないけどありえないはそこにとどまらない。
髪が真っ白だ。
まさか脱色しているのだろうか。
そんなキャラには見えないけどな。

「…えっと、転入してきたネズミ君の案内を先生から言われている紫苑です。よろしく」

差し出された細い手を取り握手をする。
ありえないというならこれも嫌な巡り合わせだ。
転入した学校で初めて会ったのがこんな男なんて最悪以外なにがあるんだ。

「……よろしく」

あぁ、本当はついてない。
そもそも本格的な転入は明日で、今日は書類を出しに来ただけだというのに何で学校案内なんかされていんだ。
帰りたい。

「それじゃあ案内するよ。最初はどこが良いかな」

瓶底、もとい紫苑が首を傾げる。
傾げると首もとがあらわになり赤い痕が目につく。
何だ?蛇…の様な。

「…?ネズミ君?」
「あ、いや。えっとじゃあ図書室が良い」
「図書室?」
「あるだろ?」
「あるよ。本好きなの?」
「そ。だから図書室の場所を教えてくれ」

そもそもこの転入だって不承不承だった。
別に行かなくても良いというのに。
“お前はもっと外を見ておいで”
足の悪い養父はそう言っておれの頭を撫でた。
おれには老の言葉の意味がわからない。
外に出て結局会ったのは今時いない様な瓶底眼鏡のオタクみたいな野郎だし。

「わかった、じゃあ着いてき――うぶっ!!?」

瓶底はくるりと背を向けて歩きだそうとしたがにすぐ後ろの壁にぶち当たる。
っていうかありえねぇ。
確かにそこだけ出っ張った場所ではあるがあんたこの学校の生徒だろ?何で当たってるんだよ。
くるくると瓶底眼鏡が飛んで落ちる。
あーあ、みっともなくて見ていられない。
どんくさくてありえない。
瓶底眼鏡を拾いあげて瓶底に(今は眼鏡はないのだけれど)差し出す。

「おいあんた大丈夫かよ」
「ったぁ〜…うん。目が悪くてよくぶつかるんだ」

強く打った鼻を覆った手をとく。
瓶底の顔があらわになった瞬間、おれは息を忘れた。
そもそも時間が止まった錯覚さえした。

その顔は。
おれが今まで見た誰よりも綺麗な顔だった。

「……ネズミ君?」

紫色の綺麗な瞳。
白いまつ毛は大きな目を更に際立たせる。
白過ぎる肌。
そうか、得心いった。
こいつアルビノか。
そういえばアルビノは弱視が多いと聞いた事がある
レンズの厚い瓶底眼鏡。
おれからすれば逆に世界が見にくいが、こいつからしたらレンズをこんなにも重ねないと見えないのか。 
理由があって眼鏡を付けている人間に理由なく笑う自分がなんだか恥ずかしく思えてきた。

「あんた、目が悪いんだな」
「うん。眼鏡をしていても見えない事の方が多いかも。けど近くなら見えるし良いかなって」

そう言って気恥ずかしそうに笑う。
どうやら見た目に反して面倒くさがりなようだ。

「じゃあ今おれの顔って見えてる?」
「いや、輪郭だけ。っていうかさっきもよく見えているとは言いがたかったんだ」

なら良かった、今のおれはきっと頬が赤いから。
出来るならば見られたくない。
そんなではかっこうがつかないじゃないか。
一人で胸中安堵しているとスッ、と紫苑が寄ってくる。
最初は眼鏡を受け取ろうとしたのかと思ったのだがそんな距離をあっさりつめてさらに近寄ってきた。
近い、近すぎる。

「ちょ、お…」
「これ位なら君の顔も良く見えるよ」

いたずらっ子の様に微笑んだ紫苑に収まりかけた心臓がまた爆ぜる。
そして、おれ達はきっと、会ってから5分は経ってようやく、初めてしっかりと目をあわせた。

「っえ…」

戸惑った声をあげたのは紫苑だった。
それから瞳が揺れて動揺しているのが見て取れる。
それからぱっと頬に朱が散る。
なまじ肌が透明の様に白いので赤くなるとわかりやすい。

「紫苑…?」
「っ!!?」

紫苑がびくっとうさぎの様に跳び跳ねる

(おれもちょっとびっくりした)
それから奪い取る様にして眼鏡を取られる。

「と、図書室!!」
「え?」
「図書室案内しなくちゃ、いや、図書室だけじゃなくてまだ全然案内できてないし急がないと!!」

わたわたと瓶底眼鏡を慌ててつけて紫苑はくるりと向き直って歩き出す。

「お、おい紫苑!!」

自分もその後をすぐに追う。

「ネズミ君明日から登校だよね!?一応一通りは説明するけどわからない事とかあればその度聞いて!」
「あんた、同じクラスなの?」

ぴたり、と今度は急停止する。
なかなか忙しないなこいつ。

「……言ってなかったけ?」
「あんたが案内してくれるとだけしか聞いてない」
「あぁ…ごめん。ぼくと同じクラスだよ」
「そっか、じゃあ改めて―…」

よろしく、と言おうとした所で紫苑はあっ!!と声をあげた。
となるとこれも言ってないよな…と小さく呟いて紫苑は向き直る。

「六蜂学園にようこそ!!これからよろしくねネズミ君」

なんとなく、先を越された気分がしないでもないが迎え入れてくれる言葉に素直に嬉しくもなった。
再び差し出された手を握る。

養父が言った言葉が、今は少しだけ意味を持って聞こえた。


END.




最近学パロの種類が増えてきましたね(笑)。
お友だちの夜柑ちゃんが「瓶底眼鏡の紫苑可愛いですね」とお言葉をくださり書くに至りました。
皆似たり寄ったりで大変恐縮ですがしかし私はすごく楽しく書いております←


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