SSS

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「鶴を千折れば願い事が叶うんだと」
「……ネズミは、何か叶えたい願いがあるの?」
「さぁな、あったとしても自分で叶えられるしな」
「ふぅん」

手の中でだんだんと形作られている鶴に願いをこめて…。
ぼくは何を願う?
なんとなく考えてもどれも違うような気がしてならない。

人間は満たされないから願い、望むイキモノだ。

向かいに座るネズミも同じように折り紙をする。
考えると良い歳をした男がちまちまと折り紙をするという図はなかなかシュールかもしれない。
思わず、笑えてしまう。
そこで気づく。

「あ、じゃあぼくはもう鶴を千を折る必要なんかないんだ」
「は?」

作り終わった鶴を放る。
そして新しい紙を一枚、色は灰。
ぼくの、好きな色。

前に手遊びとしてネズミに教えてもらった様に紙を折る。
クラバットやハムレットがちょこちょこと寄ってきて作っていく過程を眺めてきた。
ツキヨが耳元でチチッと鳴く。
作ったのはネズミ。

「だって君にこうやってまた会えたんだからね」

クラバットが紙でできたネズミに近寄りにおいをかぐ。
なんだか愛らしい。

「…あんた、バカだよな」
「そうかもしれないね」


“ネズミに再び会いたい”

その願いが叶ったからぼくはこんなにも満たされているんだ。
好きな人と一緒にいられたらそれがなにより幸せ。
絵空事とバカにされるのは目に見えてる。
けど、それでも良いかなって頬が緩んだ。

EMD.


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