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学パロで瓶底眼鏡紫苑シリーズ。放課後でーと←


「えっと…」

さっきから瓶底眼鏡の紫苑は微動だにせずにいたのだがゆっくりと息をはいた。

「ブラックコーヒーひとつ」

最初は、コーヒーが好きなのかと思っていた。
それか数あるメニューの中からひとつ選ぶのが苦手なのかとも。
けれどそれが違うのに気づいたのは紫苑とこういう風に帰り道、別れるまでの時間をほんの少しだけ伸ばしたいと駅前の某コーヒーショップに入るのが週末の楽しみになってきた頃だった。

紫苑はいつも決まってブラックコーヒーを頼む。
おれも合わせる様にいつもブラックコーヒーを頼んでいたのだがその日はたまたま甘いものが食べたくてシナモンロールを追加で頼んだ。
すると紫苑は瓶底眼鏡の向こうでぱちくりと瞬いた。

「へぇ!!そういうのもあるんだ!!」
「は?」

いや、いやいやあるだろ。
メニュー見たらシナモンロールとかマフィンとかスコーンとかだってあったじゃないか。
あんたメニュー見てないのか。
と、そこで気づいた。
紫苑は生まれが弱視だったらしく眼鏡をしていても見えない事が多いと言っていた。
そうか、紫苑はメニューが見えていなかった。
いつも霞んだ文字の羅列を眺めて結局何が書いてあるかもあやふやなまま無難なものであるコーヒーしか言わなかった、いや、言えなかったのだ。

それが先週の話。
金曜日はおれの部活動がないので駅まで一緒に帰る約束をしている。
そして、ほんのちょっとだけでも長く一緒にいたくて「少しだけお茶していかないか」とどちらかともなく誘うのだ。
場所は決まって駅前の某コーヒーショップ。

そして今日も紫苑はメニューを眺めてあきらめた様に息をついて「ブラックコーヒー」とだけ注文した。
そこでおれは割って入る様にして店員に待ったをかける。

「すいませんブラックコーヒーをやめてココアで。え?あぁじゃあアイスで」

店員も面食らうが紫苑もびっくりしている。

「え…ね、ネズミ?」
「あんた、好きなもの選べよ。メニューが見えなくてわからなかったら聞けば良いだろ」

本当は甘いものが好きだってあんたといて知った。
学校にある自販機でよく買うものはアイスココア。
苦いコーヒーはちびちびとしか飲まない。
コーヒーを飲むと少しだけ眉が寄る。
けど甘い物を食べている時はいつもより眉が下がる。
あんたといて、あんたの好きや嫌いがわかってあんたにちょっとずつ近づいていく。

「…バレてたの?」
「とっくにな。バレバレだっての」

好きな子の事なんだから、なんて言えればきっと良いのにな。

END.


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