SSS
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本番は無いけど雰囲気はR15…カナ。
この気持ちに伴う熱は、
「寒い夜も熱を分けあえば寒さを凌げるだろ?」
言って、それが酷く言い訳じみている気がした。
誰に対しての言い訳なのだろうか考えても特に相手の顔は浮かばなかったが、ただ免罪符がなければ紫苑を抱くとゆう行為に時に躊躇いを感じてしまう。
前に臆病者と罵られた事を思い出した。
あの時は憤りを伴ってそれを否定していたが存外、的外れな罵倒では無かったのではないかと今になって思う。
口づけを落としながら紫苑の肉付きの薄い胸をまさぐるとくすぐったそうにして彼は身動ぎした。
「ネズミ、くすぐったいよ」
「あんた本当にくすぐったがりだよな。くすぐられすぎたら笑いすぎて酸欠で死ぬんじゃないのか」
そんなまさか、とすぐに否定してきたが言葉の端に自信が付いていっておらず尻すぼみになってしまっている。
自分の揶揄に対して余りにも素直な反応をするものだから思わず笑ってしまう。
「っ…何も笑う事無いじゃないか」
「いやいや、陛下がお可愛らしいものだからつい」
「可愛いとか言われても嬉しくないよ」
「それは失礼、では凛々しくて立派と言っておきましょう」
「思ってもいないくせに」
「実際思ってないからな」
「………」
紫苑の語彙に罵詈雑言の類いは殆ど入っていない、だからちょっと腹がたっても相手に言い返す言葉がとっさには出てこない。
本当に坊っちゃん育ちな事だといつもは呆れるがこの意味をなさない軽口の押収を止めるタイミングには丁度良いと止めていた愛撫を再び施す。
「んッ、ぁ」
再開された指の動きに紫苑は身体をひくりと痙攣させた。
「ネズミ…っ、指冷たいね」
「あんたの身体は逆に熱いな」
行為を始める前までの紫苑は指の先まで冷えきってていたのに、今や触れるだけで焼ける様に熱い。
焼けて爛れてしまいそうな程に、
そうしたらおれは焼きつくされてしまうのだろうか紫苑に。
一瞬頭のすみでNo.6という理想都市に焼かれた故郷を見た。
熱くて、痛くて、苦しくて、何より理解出来なくて。
おれは、
おれは―‥。
「ネズミ?」
紫苑が不思議そうに顔を覗きこんできた。
曇りの無いその澄んだ瞳の色にとっさに声が出ないでいるとふっと柔らかくその相好を崩し自分をふわりと柔らかく抱き込んだ。
「なっ!?」
流石にびっくりして声が出る。
いきなり何すんだこのお坊ちゃんは。
「ネズミ、何か変な顔をしてるよ」
「舞台の花形に向かって変な顔とは大した度胸だな」
「いや、そういう意味じゃなくて。何て言うのか‥あぁもう適切な言葉が出てこない」
「勉強不足だな。勉強が取り柄の癖に、あんたはもっと本を読むべきなんだ」
「結構読んでいるつもりなんだけどな」
「読んだ分がきちんと理解して頭に入ってなければ意味がないだろう。ってか何でおれはあんたに抱きしめられてんだ手が動かせ無いんですけど」
触れあった肌の温もりと一緒に紫苑の心音も伝わってくる。
それ程に自分達は近くにいるのだと自覚する。
「何か変な顔してるから温めようかなって。寒いから顔の表情筋も固まるんだよきっと」
まだ変な顔言うかこいつは。
「大丈夫だよ、言われなくたってすぐ熱くなる」
そうやって溶け合う。
おれとあんたは。
それでもすれ違う。
おれとあんたは。
いつかあんたはいっていただろうか、西ブロックとNo.6の共存を。
第三の道を選びたいと。
紫苑、きっとそれは出来ないよ。
おれ達がどんなに交わろうと叶わないままだ。
何故ならあんたの望みはおれが崩すから。
理想都市と謳われる寄生都市を崩落させて、それでようやくおれは救われる。
だから、紫苑。
この熱に伴うこの気持ちはあんたへの裏切りへの罪の証なのかもしれない。
END
紫苑を裏切っているのに紫苑が嫌いじゃないというアンバランスさに悩んでいるネズミ。