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□灰皿。
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私は地面へと、ゴトリ。と音をたてた。

それは私を持っていた手が私を放したからだ。

私には赤い液体が付着しており、私が地面へ落ちると床に引いてあるカーペットの上も赤いものを付着させた。


私を持っていた人の呼吸は荒く、肩で息をしている状態で、目の前で起こった事に震えて、怯えていた。


数分前。


私はいつもの様にテーブルの上にちょこん。と乗っていた。

私は綺麗な半透明の青いガラスで作られていて、そ、っと置かないと割れてしまうのだ。

それは私なのか、あるいはガラスで出来たテーブルなのかは分からないけど。

でも私はテーブルの上が好きだった。

確かに何かを押し付けられたりしたけど一日に一回、水を浴びて綺麗になるのが好きだった。

私を使う人はいろんな人が居た。私はその人たちを観察するのが好きだった。

ペコペコと頭を下げる人だったり、ふんぞり返ってる人だったり、焦ったように何かを追い立てる人も居る。

だが、彼等には共通点がある。

その共通点とは、私を使うのは大抵の人が男で、煙を吐いている。という事だ。


しかし、今日は違う。

今までに見たことも無い女の人だった。

この部屋の主だと思われる男と今日、初めて見る女が何かを叫ぶように言い合っていた。

聞いていたかったが、残念な事に私には聴力が無かったのだ。

女は私を握り締めるように片手で持ち上げた。

そして女は後ろ向きの男に向かって私を力任せに振り下ろす。


男の頭に直撃した私は男を殴った時に現れた赤い液体に汚された。

男は死んではいない。

女のような力では殺せないだろう。

ただ、酷い頭痛に襲われているようだ。

床に転がって、痛さに苦しむ男は暫くすると憎いような眼つきで女を睨んだ。

床に転がっている私を男は持ち上げ、それを女の頭へと振りかざした。


私はまたもや赤い液体に汚された。今度は結構な量である。

男の力は強かった。

女は暫くピクピクと痙攣していたが先程まで動いていた事を忘れるかのように動かなくなった。

それから先程の女と同様、私を手から滑り落とした。

私はゴロゴロと転がって、女の近くに転がって行く。

そんな私と女を見下しながら男は口を動かした。

吐き捨てるような言い方で女を汚しているんだろう。

私はカーペットの赤い染みを見ながらうつぶせの状態で居た。

男は私と女に背を向けると、ぐらりと後に倒れた。

どうやら先程の女が残した頭痛に襲われたんだろうと私は思った。

そう思っているうちに男は私に向かってきた。


そして男は女に殴られた傷口を再び私の元へ運んできた。

数分後。

男は女と同じように動くのを忘れた。

私は男の頭の下に引かれたまま今日の水浴びの心配をした。












灰皿視線で。こんなのどうっすか?

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