離れても共に

□集結
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「イェンツォ!」

嬉しさの余りに、飛びかかる。
驚いた彼は、うわぁと小さな声をあげて…それでも彼女の体を抱き止めた。

「どうしたのですか、名無しさん──というか、戻ってきたのですね!」

久しぶりだと笑顔で言う彼を見つめると……徐々にその笑顔が引いていく。

「久しぶり? いえ、違います──ぼくは、貴女と……」






『あの雪のような景色を二人で』






抱き止めた体を、今度は強く強く……抱き締める。


「名無しさん──ナナシ──! 貴女と……やっと……!」
「イェンツォ……ゼクシオン……!!」


二人でしばしの抱擁のあと、少し遅れて現れたディラン、エレウスもともに再会を喜んだ。

















「エヴェンは、そうか。まだ目を覚まさないのか」


目を覚ましたメンバーで机を囲い、これまでの各々の経過と、これからなすべきことを話す。


一人黒いコートのままのアクセルは落ち着かない様子だった。

「俺は──」
「分かってる、ソラのところへ行くんでしょ」

はっとして、声の主を見つめる。

「サイクスは最後までゼムナスの側近だった……私もその後が気になる。何かあれば私も行くから、連絡を頼む」
「分かった」
「よろしく」

にっと、笑う。

と……何故かガン見のアクセル。その目を離せないようだ。

一方でその様子に標的の彼女が苦い顔

「な、なに──?」
「……あ!いや、わりぃ! 」

手をぶんぶん振るアクセル
頭もぽりぽりかいて、視線をずらす

「ナナシがそんな風に笑ってるのが、その、何か変な感じで……」

言ってる本人はほんのり頬が紅潮

「いや、おかしいって意味じゃねーぞ! むしろ何つーか……可愛いってか……」

後半は小声でもにょもにょ言っていて、正直よく聞き取れない。本人は、ん?と眉間にしわを寄せている

……が、彼女と旧知の仲の連中には聞こえたようで

「そういえば」

イェンツォが二人の間に割り込んで視界を遮り、門番組が彼女の両隣を囲んだ。

「貴女は名無しさん──なのですか? それともナナシと呼んだ方が……?」

うーんと唸る彼女

「それが変な戻り方したからなのか……どっちの記憶もあるんだよね」
「二つの異なる記憶が同時に存在すると? それは脳内キャパシティー的に問題なのでは?」
「そうなんだよね〜でも事実、こういう感じで存在していられる──フォルダが二つある感じなのかな」

腕を組んで考え始める名無しさんの頭に、ぽんと手がのる。

見上げるとディランだった

「俺達としては、お前がハートレスとノーバディ、どちらの記憶も持っているのは喜ばしいことだ」
「ありがとう、ディラン。どちらの私にも優しくしてくれたのを覚えてるよ」

微笑み合う二人だったが……近くでイェンツォから黒い空気が流れ始めたので、アクセルはやや一歩引いた。



「まぁ、私の記憶の考察は後にするとして──ともかく」


残っている全員の顔を見渡す


「私はソラ達を助けたい──そのために手伝えることをやろうと思う」

その言葉に答えるかのように、全員が頷いた。



──こうして物語は再び動き出した。





END.





皆フツーに復活していてこれまたビックリ。Uの頃に色々考えたのが杞憂となりました(爆)
むしろ姫さんが特殊っ子になってしまった

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