離れても共に
□約束
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エレクゥス一門が揃い、皆が肩を震わせる──。
ひとしきり再会の念に浸り……そして立ち上がり
「名無しさん?」
「行かないと、いけないの──後で合流するから先に行ってて」
走り出した。
急いだが、既にほぼ勝敗は決まっていた
影が揺らぐ姿に──駆け寄る
「ブライグ!」
心を繋ぐ若い勇者達が、危険だと声を荒げるが……関係なかった。
目を、見開いた。
「名無しさん──」
「ブライグ……なんで……」
どうしてだろう
前の時もこうやって、消える間際にいつも大切な人が現れては涙を浮かべる
いつもいつも……そうやってばかり。
──それでも、全て望んだこと。
「やっと……帰ってきたか」
「ブライグ……私は、ブライグがいたからっ……!」
ずっと、逢いたかった──
今となっては、それが何なのか分からないが
それでも──彼女の顔を見ると空虚なはずの胸がひどく痛んだ。
でも、その泣き顔が……もう一人の彼女と重なった。
ずっと、触れたくても、触れられなかった。
そっと……首に腕を回して、耳元で囁く
「幸せになれよ──お姫様」
今の自分に精一杯の言葉だった。
そのまま離れる
伸ばされた手には応えず
ただ……今の役目の全うを。
耳元で揺れる黒い石に気付くと──口元が少し緩み、かつてを懐古した。
──片耳だけ。
やはりもう片方は、アイツだったか──と。
彼女はきっと、もう大丈夫だろう
共に過ごした日々に感じた闇を今は感じない。
気掛かりとすれば、もう一人の──
──いや、今は使命の全うを。
瞼をおろした時に浮かんだのは小さな笑顔だった。