離れても共に

□狭間
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だが、そこで──後ろから制止


「やっと、会えたのだ……ナナシ」


その声で、その名を呼ばれるとゾクリとする

先程の嫌悪感とはまた違う感覚で、それは一種異様な──。


「……なんだ、ゼムナス」
「ナナシ──私の、愛おしい子」

捕まれた手首から引き寄せられ、距離が近付く。

闇と分かりつつも、そのまとうオーラすら懐かしく感じた。


敵でさえなければ、本来は長年共に過ごした仲間──今すぐにでも、イェンツォの時と同様に抱き締めたい。

それも叶わぬ……いや、叶えてはならない気持ち。光に力を貸すと決めた時から抑えなければならない感情だった。


──視線があったままの沈黙が続く。


先に動いたのは……男の方だった。

咄嗟に構えるが──違っていた。


「私の元へ、また、戻ってきたか……やっと」

手のひらで顔を撫でられたかと思うと、そのまま胸元へ引き寄せられた

肩を抱かれ……感じる体温。


「──なっ!?」
「私のナナシ」

抱き寄せられるとはつゆも思わず、本当に心乱れた様子になる。それを彼は面白そうに見つめていた。

「ほう……心のある君は、面白い反応をする」
「あのね!」

かつてでは出来なかった、あからさまに感情を露にする……怒ればいいのか、喜べばいいのか。正直なところは恥ずかしい。

「興味深いが、少し静かにしたまえ。感動の再会ではないか」
「人のことを脅して、かっさらっといて──」



言葉を続けようにも、近付く顔に言葉が止まる

そのまま……触れるだけの口付けを受けた。


「──!!」
「本当に、林檎のように真っ赤になるのだな」


また口角があがる。絶対に楽しんでいると思うと殴り付けたい衝動が迫ってくるが


そこで──後ろに気配

と、同時に目の前のゼムナスと少し距離が開いた



「何を勝手なことを」


反対側の引き寄せられた先には──


「ゼアノート!……のハートレス」


こちらも久方振りの対面だし、敵の本拠地なら再会も想定内だ

だが今は──


「あ〜もう、紛らわしいから!」
「お前は変わらないな」
「なにも、紛らわしくない──君が、元に戻った結果だ」


後ろからアンセムが頤を指で持ち上げ、耳元へ顔を寄せてくる。


「どういう……」
「光の連中の影響か? 鈍くなったな」

耳へかかる吐息にぞくりとし、違う感覚が背中を走るが……前後を敵に挟まれている現状、口調だけは変えずに貫いた。

「失礼な。結局、私のノーバディとハートレスが欲しいってことでしょ」

二つの視線は変わらずこちらへ注がれていた。


「特殊な戻り方をしたから、これ以上触れば記憶の保持に確証ないわよ。アンタ達の使い物にならないかもね」


むしろ──離れないとはまだ気づかない。


闇の器になるものかと、威勢よく流暢に話してみせる

しかし……何故か二人は鼻で笑う。


「そうだな」
「我々を忘れるのは、いささか、好ましくない」
「それは良かった。じゃあ早く離れて──っ!」


耳への強烈な異物感に、全身が跳ね反る

耳の穴を舐められていると分かるのと同時に、顎を触っていた指が口へと挿入された。


「つまり──分かるだろう」
「君が一人で、我々を受け止めればいいのだよ」


額に唇をつけるゼムナス

その手は……前から体の線をなぞる。

一方後ろからは、口へ入っていない片手が、胸の膨らみを撫でる。


「──ちょ、ちょっと待って!?おかしい!なんでこんなっ」
「お前は変わらずデリカシーがないな……ああ、それはハートレスの頃のお前だったな」
「うるさいゼアノート!って違う!ゼムナスも待てと──」
「うるさいと言っただろう」

指が口から離れるが、その唾液に濡れたままの手が首を強引に横へと向けて

後ろから無理矢理唇を重ねられる。


「ゼアノ──!」

あいた隙間から舌がまとまりつき、まともに言葉を発せられない……

かと思えば、また片耳を舐められる感覚。


「ナナシ──やっとまた、触れられる」


その間にも手は進み、体を這っていく……

服をはぎ、後ろからは胸を強く揉みこまれ、前からは乳首を捻るようにいじられる。

「やっ……!」
「受け入れろ」

やっと離れた口からは悲鳴にも似た喘ぎ声。足ががたつき、立っていられなくなるも容易に支えられてしまう

そして、二人の手が下半身へとのびてくる──

先にどちらの指が触れてきたか、もはや分からない。服の上からなぞっていたが、すぐに下着の中へと入ってくる

「待って、だめ……!」
「なにが、いけないのだ? こんなに潤っていて──」


指が一本。太く、異物感

だがすぐに、もう一本が奥へと容赦なく侵入してきた


「ひっ……! やっ、待って……!」
「待たない」
「君が、愛おしい」

粘着質な音をたてながら、太い二本の指が膣の内壁を擦り付ける

それこそ互いが自己主張して、違う方向を刺激し、力が抜ける……


だが突如抜かれて刺激がなくなり、床へと座り込んで肩で息をする。

それも──刹那の時間だけ。


「これからだろう──名無しさん」

後ろからはアンセムに抱えられて、そのままベッドの上で片足を持ち上げられる。秘部が露で、抵抗するも勿論通じる訳もなく……

それどころか、あらぬ所への異物感も同時に襲ってきた。


「やっ、何して……!」
「ナナシ」

後ろを見ようとしてい間に、覆い被さってくるゼムナス

雄々しく起き上がるものが見えた。


「やだちょっ──ああぁっ!」


ずぷりと、指より太いものがゆっくり入ってくる。

ゆっくりゆっくり、奥へと進んでくる。

つい耐えられなくて前の黒いコートへしがみつくが……今度は後ろからは違う異物感が迫ってくる。

悲鳴に近い声があがるが、それもゼムナスが唇で塞ぐ。血の味も混ざるが、大きく舌が絡んでくる……涙と唾液で顔が濡れているのが分かった。


──後ろも全てのみこまれたところで、口が解放される。


息することすらも辛い


「はっ、あ……!」
「君の中はあたたかいな、ナナシ」
「名無しさん、そんなに泣いてどうした、気持ちが良いか」
「ふざけっ──」


悪態を吐く猶予すら与えられない

双方の腰が動き始める

後ろはゆっくりと

前は突然に


「やだ、ちょっと待って……!こんなの、無理……!」
「君が一人で受け入れなければ、心を奪うしかなくなってしまう」
「お前が望んだことだろう」


違うと言いたいが、音にならない

音になるのは吐息と喘ぎだけ──


違う速度で中を攻め立てる

耐えようと下唇を噛むと、また舌が入ってくるし、首筋や耳を舐められる……

勿論四本もあると、あいた手が愛撫を止めることなく、胸の先端や陰核への刺激も続く。


擦られて擦られて、肌と肌の激しくぶつかる音が部屋にこだまする


びくびくして──視界が朦朧とする


双方の顔が寄ってくる



「愛している」

「欲したものは手に入れる」




──中に熱が注がれた。
















「ありえっ、ない……!!」

肩で息をして、涙で濡れた目元を誤魔化そうとベッドへ顔を伏せる。

「こんな、ふざけ──」


すると……ゼムナスが後ろから覆い被さる


「──え?」


腰にかたいものが当たる


「ナナシ──その泣いた顔も、なんと愛らしい」


そのポジション……


さっきと、逆。


「嘘でしょ!?ちょっと待って待って!」
「何が嘘なものか」


体をまた持ち上げられ、起き上がった性器を前から太股へ擦り付けられる。



「あっ、ああ……!」


挿入された二つの異物に、またしばし体が震えた。


慣れたといっても……辛い



「ナナシ──」
「名無しさん、こっちを見ろ」



呼ばれた名前だけが耳に残った。

















「信じられない……なんで、こんな目に……」


完全に脱力して、塞ぎこんでいる彼女を不思議そうに眺める。


「心に忠実に求めただけだ」
「愛しい記憶が私にはある」


──この二つの存在に理解してもらうのは無理かもしれないと悟った。


「あ〜分かった……私が悪かった、無駄だった……」
「納得したか」


「では──また来よう」


……また?

「え、また!?」
「明日の夜」
「愛し合うものはそうであろう」


嫌ってはいない

むしろ逆の存在……ただ


──無理だ



直感的に思ったが、二人はいつも通りの顔をしていた。





END.






エライことになっちまった!(笑)
今回全員消滅からの再会なので、元から好感度高くてこうなりました。
お陰で意図せずに勝手に裏へ行くわ行くわ…止まらない。

多分本体の老ゼアノートも姫さん好きだと思います、心と体が大好きなので。

よくよく思い返せば存在しない世界ってもう潰された気もしますが、うちの城は健在ということでっ(逃)

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