離れても共に

□別れ
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「お前、この期に及んで逃げ出すなってハナシ」


城下──襲うシャドウが消えたかと思えば、現れた声に構えたキーブレードを消す。

「ただの散歩だって」
「ったく……せっかく誤魔化してやったんだから大人しくしてろ」
「やっぱり庇ったのか」


──無言こそが肯定で、少し笑った。


「ありがとう」


その笑顔に──弱かった。


「ほら戻るぞ」
「へーい」


城へ戻る道をわざわざ歩くのは自然の流れ。


きっとこれが……最後の時間だと分かっているから。



「でもね」
「あ?」
「大切な人のためなら──心を離す覚悟はあるよ」
「せっかく人間に戻ったのにか」
「まぁね。守ってくれたのに明日自爆してたらごめんね〜」

笑いながら言う言葉に、正直笑えなかった。



言葉には出来ないが


どうかそのまま────。



「シグバール」
「今度は何だ」


それはいつか聞いた言葉


「運命って信じる?」


いつか──自分が問い尋ねた言葉。


「お前、非論理的だって言ったじゃねぇか」
「あ、よく覚えてるね。それで、どう思う?」
「さぁな」



気付くと隣に居なくて、後ろを振り返る。

立ち止まり、空を見上げていた。




「今はね──あればいいなって、思うよ」



そして……俺を見て笑う。



「おとぎ話だな」
「そうだね、夢語りかもしれない」


悲しそうではなくて

ただ優しく微笑む。


それはきっと……今まで一番、穏やかな表情。



何故かのばされる手


「なんだよ」
「えー昔は繋いでくれたでしょ」
「昔だろ!お前もう幾つだ」
「いいじゃん!」


悪態をついても、結局は手をとり……昔懐かしく、手のひらの温もりを感じた。



そしてその手を──






────離した。




キーブレード墓場



「私と、共に」
「お前はゼムナスと行け」


うってかわり、分をわきまえた名無しさんは大人しく従った。


これからは──別々の戦い。


あいつがどう使われて、どう抗うのかを見届けることは出来ないだろう。



それでも別れ際の口元は


──またね



そう、呟いていた。



それも……いつか誰かに言われた、悲しい記憶。


たとえ運命が存在するのなら


悲しい別ればかりでなく



どうか、健やかな願いも────。





END.





最後の単語が文脈上どうしても違和感あるんですが、これ以外思い浮かばず

病める時も健やかなる時もって、どこかでやりたいなぁ。


墓場バトルの時はBbS姫さんが逢瀬してたので、こちらの姫さんはゼム達とです(現段階では書いてないですが爆)

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