離れても共に
□支え
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「こんな遅くまでどちらに行っていたのですか、名無しさん!体もこんなに冷えて」
「ゼクシ──イェンツォは心配性だな、大丈夫だ」
彼女が仲間達の元へと戻るのを気づかれない場所から見届ける。
その間に思い出すのは、先のこと──
──キーブレードを握った彼女が
自らに心を取り出した。
絶句。
「──案外平気なものだな」
保つ姿は、恐らくノーバディ。
「な、に……しやがって──!」
「お前に託そう。必ず返してもらう」
キラキラと眩しいそれはまるで光
「お前は──ナナシ、か」
「まぁそうだな。だが本体の記憶も継承しているから、問題ない」
戻る時は心配だが、と呟く。
問題なら大有りだが、その姿だとやはり幾分か、先程より落ち着きがある。
それよりも──
「お前……!」
せっかく守ってきたのに
その台詞が喉まで出かかって
でも、思い出す言葉があった。
『大切な人のためなら──』
「私の心は、お前の傍を選んだ。残った私は、仲間達を守ろう」
本当に、敵わないと
「お前の場所だ」
彼女の落ち着いた響きで……いつか自分が誰かに言った言葉を重ねられて、むしろ笑えてきた。
「なんだシグバール……いや、ブライグ?そろそろ名前を統一しろ」
「そのうちな」
無茶苦茶で、面白くて、腹抱えて笑って
「──預かった」
「ああ」
そっと……口付けた。
これがどんな結末に行き着くのか、今は分からない
良いことなのか、悪いことなのかすらも分からない
明確な事実は──
心は共に。
「名無しさん──」
またいつか共に歩けたら、その時は隠さず全てを伝えよう。
その存在が心の支えだと。
──静まり返った城下には、もはや誰の声も聞こえなかった。
END.
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